司法書士試験H28午前の部第11問【先取特権】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法書士H28午前の部第11問を解説していきます。

 

第11問 先取特権に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

ア 動産売買の先取特権の目的物に質権が設定された場合,当該質権は,当該動産売買の先取特権に優先する。

イ 不動産の工事の先取特権は,工事によって不動産の価格が一旦増加した場合には,先取特権の行使時点において当該価格の増加が現存しないときであっても,行使することができる。

ウ 動産売買の先取特権の目的物である動産が第三者に売却された場合には,その引渡しが占有改定の方法によりされたときであっても,先取特権者は,その動産に対して先取特権を行使することができない。

エ 動産売買の先取特権の目的である動産を用いて当該動産の買主が請負工事を行ったとしても,請負代金債権の全部又は一部を当該動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には,先取特権者は,その部分の請負代金債権について物上代位権を行使することができる。

オ 登記されていない一般の先取特権は,登記されていない抵当権と同一の順位となる。

1 アイ 2 アウ 3 イオ 4 ウエ 5 エオ

出典

問題『司法書士試験H28問題

解答『司法書士試験H28解答

アについて

民法334条
先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第330条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する。
民法330条1項
同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。
一 不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権
二 動産の保存の先取特権
三 動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権

アの場合に質権は330条の第一順位の先取特権者と同一の権利を有しており、第3順位の先取特権者に優先することになります。 そのため、解答は◯となります。  

イについて

民法327条2項
前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。

不動産の価格の増加が現存する場合に限って、その増価額について先取特権を行使できるため価格の増加が現存しなければ行使できません。 そのため、解答は✖となります。

ウについて

民法333条
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。

先取特権は、債権者が目的物の動産を第三者に引き渡した場合に行使することができなくなり、判例では333条にいう引き渡しには占有改定も含まれるとします。 そのため、解答は◯となります。

エについて

民法304条
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

判例:最高裁判決平成10年12月18日

要旨では「請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができない」と述べられます。

ただ、エのような特段の事情があるならば、先取特権者はその部分の請負代金債権に物上代位権を行使できるため、解答は◯となります。

オについて

民法336条
一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。

登記をしていない一般の先取特権は登記をしていない抵当権に優先するので解答は✖となりますが、登記をした第三者には対抗できません。

以上、イ=オ=✖・ア=ウ=エ=◯なので解答は3となります。