司法試験平成29年民法短答式試験第13問 【先取特権の順位】

みなさん、こんにちは!

今日は、【先取特権の順位】の問題を解説します。

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〔第13問〕(配点:2)
先取特権の順位に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№13])
ア.共益の費用の先取特権は,全ての特別の先取特権に優先する。
イ.農地の天然果実については,農業労務の先取特権が不動産賃貸の先取特権に優先する。
ウ.工事を始める前にその費用の予算額を登記した不動産工事の先取特権は,その登記に先立って設定登記がされている抵当権に優先する。
エ.同一の不動産について不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が競合する場合,その優先権の順位は同一となる。
オ.同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは,各先取特権者は,その債権額の割合に応じて弁済を受ける。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ

問題『http://www.moj.go.jp/content/001224569.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001225946.pdf

アについて

民法329条では以下のように規定されます。

一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。

 出典『民法第329条 - Wikibooks

 一般の先取特権と特別の先取特権の場合は「一般の先取特権<特別の先取特権」となります。

ただ、共益の費用の先取特権の場合は「共益の費用の先取特権>その利益を受けたすべての債権者」となっています。

そのため、解答は✖となります。

イについて

同一の動産について先取特権が互いに競合する場合には、その優先順位は以下の順位に従います(民法330条)。

  1. 不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権
  2. 動産の保存の先取特権
  3. 動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権

ただ、果実に関しては第一の順位は「農業の労務に従事する者」に、第二の順位は「種苗又は肥料の供給者」に、第三の順位は「土地の賃貸人」にと定められています(330条3号)。

そのため、解答は〇となります。

 

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ウについて

不動産工事の先取特権が効力を有するためには工事前に予算額の登記をする必要があり(民法338条)、その場合の先取特権は抵当権に先立った行使することができます(339条)。

よって、解答は〇となります。

エについて

同一不動産に不動産保存の先取特権と不動産工事の先取特権が競合する場合には、その優先順位は①不動産保存・②不動産工事となります。よって、解答は✖となります。

これは民法325条より明らかで、競合する場合には以下のような順位になります。

  1. 不動産保存
  2. 不動産工事
  3. 不動産売買

オについて 

民法332条では以下のように規定されます。

同一の目的物について同一順位の先取特権者が数人あるときは、各先取特権者は、その債権額の割合に応じて弁済を受ける。

出典『民法第332条 - Wikibooks

ここにあるように、同順位の先取特権者が複数人いる場合には、その債権額の割合に応じて弁済を受けることができるため、解答は〇となります。

ただ、同順位でない場合には民法306条に掲げる順位に応じて弁済を受けることができます。

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