司法書士試験H28午前の部第4問【不在者の財産の管理人】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法書士H28午前の部第4問を解説していきます。

 

不在者の財産の管理人(以下「管理人」という)に関する次の1から5までの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものは,どれか。

1不在者が管理人を置いた場合には,その不在者の生死が明らかでなくなったとしても,利害関係人は,その管理人の改任を家庭裁判所に請求することができない。

2不在者が管理人を置いていない場合においても,その不在者が生存していることが明らかであるときは,利害関係人は,管理人の選任を家庭裁判所に請求することができない。

3家庭裁判所が管理人を選任した後,不在者が従来の住所において自ら管理人を置いた場合には,家庭裁判所が選任した管理人は,その権限を失う。

4家庭裁判所が選任した管理人は,家庭裁判所の許可を得ないで,不在者を被告とする建物収去土地明渡請求を認容した判決に対し控訴することができる。

5家庭裁判所が選任した管理人がその権限の範囲内において不在者のために行為をしたときは,家庭裁判所は,不在者の財産の中から,管理人に報酬を与えなければならない。

出典

問題『司法書士試験H28問題

解答『司法書士試験H28解答

1について

民法第26条
不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる。

不在者の生死が明らかでないとき、利害関係人は管理人の改任を家庭裁判所に請求することができるため、解答は✖となります。

2について

民法25条1項前
従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
不在者が管理人を置いていない時は、家庭裁判所は利害関係人や検察官の請求で財産管理に必要な処分を命じることができます。 そうすると財産管理のために管理人を請求することができると解されるので、解答は✖となります。

3について

民法25条2項
前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

3のような場合は25条2項に基づいて管理人がその命令を取り消すことで権限を失うため、解答は✖となります。

4について

判例:最高裁判決昭和47年9月1日

民法第28条
管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

家庭裁判所が選任した管理人は家庭裁判所の許可を得ずに、4で述べられる判決に対し控訴できるとするのが判例の立場になります。 そのため、解答は◯となります。

5について

民法第29条
家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる

管理人が権限内で行為を行った時は、裁判所は不在者の財産の中から相当の報酬を管理人に与えることができるのであり、義務ではありません。 そのため、解答は✖となります。