司法書士試験H30午前の部第23問【相続人の不存在】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法書士試験第23問を解説していきます。
第23問 相続人の不存在に関する次の 1 から 5 までの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものは,どれか。 1 相続開始の時に相続人のあることが明らかでない場合には,相続財産は,相続財産の管理人を選任する審判が確定した時に,法人となる。 2 相続財産の管理人がその権限内で相続財産を売却した後に相続人のあることが明らかになったときは,相続人は,当該相続財産の買主に対し,その代価を弁償して,その返還を請求することができる。 3 相続人の捜索の公告期間内に相続人としての権利を主張する者がなかった場合において,その後に,相続財産に属する金銭債務の債権者があることが相続財産の管理人に知れたときは,相続財産の管理人は,その債権者に対し,弁済をしなければならない。 4 相続財産全部の包括受遺者のあることが明らかである場合には,相続財産法人は,成立しない。 5 相続人の捜索の公告期間内に相続人としての権利を主張する者がなかった場合において,その後に相続人のあることが明らかになったときは,相続人は,特別縁故者が相続財産の分与を受けた後の残余財産を相続する。 出典 問題『http://www.moj.go.jp/content/001266146.pdf』 解答『http://www.moj.go.jp/content/001266144.pdf』
アについて
民法951条
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
被相続人が存在しなくなることで財産を管理する主体がいなくなることを防ぐ必要があり、相続人が死亡した時点で法人となります。
そのため、解答は✖となります。
イについて
民法955条
相続人のあることが明らかになったときは、第951条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。
相続財産売却後に相続人が明らかになった場合に法人は成立しませんが、管理人が権限内でした行為は有効なものとなります。
そうすると買主は返還を請求することができないので解答は✖となります。
ウについて
民法958条の2
前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。
相続人としての権利主張がない場合、相続財産に関する債権者がいたとしても権利を行使することができず、管理人は弁済する必要もありません。
そのため、解答は✖となります。
エについて
民法951条
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
要旨では「 遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、民法九五一条にいう『相続人のあることが明かでないとき』に当たらない」と述べられます。
包括受遺者が存在していれば951条にいう「相続人のあることが明らかでないとき」に該当しないため、法人は成立せず解答は◯となります。
オについて
民法959条
前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第956条第二項の規定を準用する。
民法958条
前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
958条に基づいたもので相続人が明らかにならなかった場合には、その相続財産は国庫に帰属することになります。
残余財産を相続することはできないので解答は✖となります。