司法試験民法短答式試験H28第33問【共同相続】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第33問を解説していきます。 

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〔第33問〕(配点:2) 共同相続に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№33])

ア.共同相続人であるAとBの間で遺産分割協議が成立した場合において,Aがその協議において負担した債務を履行しないときであっても,BはAの債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することはできない。

イ.共同相続人は,既に成立している遺産分割協議の全部を共同相続人全員の合意により解除した上で,改めて遺産分割協議を成立させることはできない。

ウ.共同相続が生じた場合,相続人の一人であるAは,遺産の分割までの間は,相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人Bに対して,自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。

エ.A及びBがCに対して400万円の連帯債務を負担していたところ,Aが死亡し,その妻D及び子Eが相続した場合,Cは,Eに対して,Aの負担していた400万円の債務全額の支払を請求することができる。

オ.A,B及びCが共同相続した甲土地の共有持分権をCから譲り受けたDが,A及びBとの共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は,遺産分割審判である。 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ エ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf』 

アについて

最高裁平成元年2月9日判決では「 共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が右協議において負担した債務を履行しないときであつても、その債権を有する相続人は、民法五四一条によつて右協議を解除することができない」とされています。

理由として、「遺産分割が協議の成立で終了し、その後は債務を負担する相続人と債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけで、そうしないと遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法定安定性が害されるから」ということが挙げられています。

そのため、解答は◯となります。

イについて

最高裁平成2年9月27日判決では、「 共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる」とされています。 そのため、解答は✖となります。

ウについて

最高裁平成4年4月10日判決では上記のように述べられて、遺産分割までに金銭の支払いを求めることはできないとしているので、解答は◯となります。

エについて

最高裁平成34年6月19日判決では、「 連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となる」と述べられています。 CはAの負担していた債務のうち、全額ではなく連帯債務で負担していた200万円の支払いを請求することができるため、解答は✖となります。

オについて

判例では、共有物に遺産共有持分と他の共有持分が併存する場合に、共有関係の解消を求める方法は共有物分割訴訟であるとされています。 そのため解答は✖となり、ア=ウ=◯・イ=エ=オ=✖なので解答は1となります。

 

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