司法書士試験H30午前の部第6問【時効】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法書士試験H30午前の部第6問を解説していきます。

司法書士試験H30午前の部第5問【代理】

 

 

第6問 時効に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記 1 から 5 までのうち,どれか。 ア 貸金債務を負う者が死亡し,その者に複数の相続人がいる場合において,遺産の分割の際にその貸金債務を負担する相続人を決定したときは,その決定した時から 6 か月を経過するまでの間は,その貸金債務について消滅時効は完成しない。 イ 売買契約において,売主が,自己の目的物引渡債務を履行していないにもかかわらず,代金の支払期限が到来したことから買主に対し売買代金支払債務の履行を催告した場合において,催告の時から 6 か月以内に支払督促の申立てをしたときは,その売買代金支払債務について消滅時効は中断する。 ウ 未成年者がその法定代理人の同意を得ずに債権者に対しその債務を承認した場合には,法定代理人がその承認を取り消したときであっても,その債権の消滅時効は中断する。 エ AとBが共同の不法行為によってCに損害を加えた場合には,CがAに対し裁判上の請求をしたときであっても,Bに対する損害賠償請求権の消滅時効は中断しない。 オ 不動産の占有者が第三者の侵奪行為によってその占有を失った場合であっても,その後,占有回収の訴えによってその占有を回復したときは,当該占有者による不動産の取得時効は中断しない。 1  アウ 2  アエ 3  イエ 4  イオ 5  ウオ 出典 問題『http://www.moj.go.jp/content/001266146.pdf』 解答『http://www.moj.go.jp/content/001266144.pdf

アについて

民法160条 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

アの問題ではすでに相続人が複数いることが分かっており、その時点から時効が進行していると考えられる。

そうすると、

債務の相続人が決定してから6か月以内でも時効が完成することになるため、解答は✖となります。

イについて

民法153条 催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

153条に述べられるように、催告から6か月以内に支払い督促の申し立てをすることは時効中断の効力を生じさせる一つの要因となります。

そのため、解答は◯となります。

ウについて

民法156条 時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力又は権限があることを要しない。

債務の承認について行為能力や権限があることを必要としないため、未成年者の承認の有効なものとなります。

そのため、解答は✖となります。

エについて

民法434条 連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても、その効力を生ずる。

最高裁昭和57年3月4日判決では、「共同不法行為者が負担する損害賠償債務は、いわゆる不真正連帯債務であつて連帯債務ではないから、右損害賠償債務については連帯債務に関する同法四三四条の規定は適用されない」と述べられます。

連帯債務者の一人に履行を請求しても他の者に効力は及ばないため、解答は◯となります。

オについて

民法203条 占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅する。ただし、占有者が占有回収の訴えを提起したときは、この限りでない。

最高裁昭和44年12月2日判決では「 民法二〇三条但書は、占有を奪われた者が、占有回収の訴を提起して勝訴し、現実にその物の占有を回復した場合に、占有の継続を擬制する趣旨と解するのが相当である」と述べられます。

占有回収の訴えで勝訴して占有を回復すれば占有を継続したものとみなされ、時効は中断しないため解答は◯となります。

以上、ア=ウ=✖・イ=エ=オ=◯なので解答は1となります。