司法試験民法短答式試験H27第10問【共有物の分割】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H27民法第10問を解説していきます。

〔第10問〕(配点:2) 共有物の分割に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№10]) ア.遺産分割前において共同相続人の一人から遺産を構成する不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が,その不動産の共同所有関係の解消を求めるためには,共有物分割訴訟によらなければならない。 イ.共有物の分割請求をした共有者が多数の場合,分割請求をされた共有者の持分の限度で現物を分割し,その余は分割請求をした共有者の共有として残す方法により共有物の分割をすることはできない。 ウ.共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし,これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法により共有物の分割をすることはできない。 エ.裁判所は,共有物の現物分割が物理的に不可能な場合のみでなく,社会通念上適正な現物分割が著しく困難な場合にも,共有物の競売を命ずることができる。 オ.数個の共有建物を一括して分割の対象とし,共有者各自が各個の建物の単独所有権を取得する方法により共有物の分割をすることはできない。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ 出典 問題『司法試験H27民法短答式問題』 解答『司法試験H27民法短答式解答

アについて

最高裁昭和50年11月7日判決では「共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟である」と述べられます。

そのため、解答は◯となります。

イについて

判例では共有者が多数である場合に分割請求者の持分の限度で現物を分割して、その余を他の者の共有として残す方法によることも許されるとされています。

そのため、解答は✖となります。

ウについて

最高裁昭和62年4月22日判決では価格賠償によって公平に共有物を分割することが認められているため、解答は✖となります。

エについて

民法258条2項 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

最高裁昭和46年6月18日判決では、「民法二五八条二項にいう『現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ』とは、現物分割が物理的に不可能な場合のみを指称するのではなく、社会通念土適正な現物分割が著るしく困難な場合をも包含するものと解すべき」と述べられます。

判決から分かるように社会通念上分割が困難な場合にも競売を命じることができるため、解答は◯となります。

オについて

最高裁昭和45年11月6日判決では、 同じ土地にある数個の建物を「一括して分割の対象とし、共有者がそれぞれ各個の建物の単独所有権を取得する方法によることも許される」とされます。

共有者各自が単独所有権を取得することが可能になるため、解答は✖となります。以上、ア=エ=◯・イ=ウ=オ=✖なので解答は2となります。

 

司法試験民法短答式試験H27第11問