司法試験民法短答式試験H28第24問【売買】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H28民法第24問を解説していきます。

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〔第24問〕(配点:2) 売買に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№24])

ア.解約手付の授受された売買契約の買主は,自ら履行に着手した場合でも,売主が履行に着手するまでは,手付を放棄して売買契約の解除をすることができる。

イ.甲土地の売買契約がAを売主,Bを買主として締結され,AからBに甲土地の引渡しがされたが,甲土地がCの所有であった場合において,Aが甲土地の権利をCから取得してBに移転することができないことを理由にBが甲土地の売買契約を解除したときは,Bは,Aに対し,その解除までの間の甲土地の使用利益を返還しなければならない。

ウ.建物とその敷地の賃借権とが売買契約の目的とされた場合には,敷地に欠陥があり,賃貸人がその欠陥について修繕義務を負担するときであっても,買主は,売主に対し,その欠陥が売買の目的物の隠れた瑕疵に該当することを理由として瑕疵担保責任を追及することができる。

エ.売買契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合において,買主がその瑕疵があることを知った時から1年以内に瑕疵担保による損害賠償の請求をしたときは,その時点で買主が目的物の引渡しを受けた時から10年を経過していたときであっても,その損害賠償請求権につき消滅時効は完成しない。

オ.建物の強制競売の手続が開始され,借地権の存在を前提として建物の売却が実施されたことが明らかであるにもかかわらず,実際には建物の買受人が代金を納付した時点において借地権が存在しなかったことにより,建物の買受人がその目的を達することができず,かつ,債務者が無資力であるときは,建物の買受人は,強制競売による建物の売買契約を解除した上,売却代金の配当を受けた債権者に対し,その代金の返還を請求することができる。

1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001182604.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001184007.pdf

アについて

民法557条
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

解約手付が交付された場合には、当事者の一方が履行に着手するまで、買主は手付の放棄・売り主は倍額の償還で契約を解除できます。 そのため、解答は◯となります。

判例:最高裁判決昭和40年11月24日

イについて

民法561条前段
前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる

最高裁判決昭和51年2月13日では、 売買契約で目的物の引き渡しを受けた買主は、民法561条で契約を解除されても、原状回復義務として解除までに目的物を使用した収益を返還する必要があるとされています。 そのため、解答は◯となります。

ウについて

民法570条
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

最高裁平成3年4月2日判決では、「 建物とその敷地の賃借権とが売買の目的とされた場合において、賃貸人が修繕義務を負担すべき敷地の欠陥は、売買の目的物の隠れた瑕疵ではない」とされています。

そのため、買主は売り主に瑕疵担保責任を追及することができないので、解答は✖となります。

エについて

最高裁平成13年11月27日判決では、買主が瑕疵に気付かなければ買主の権利は消滅することがなく、売り主に過大な負担を課することになるため、瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効があるとされました。

民法167条
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

この消滅時効は売買の目的物を引き渡したときから進行することになっているため、エの場合は時効が完成することになりますので、解答は✖となります。

オについて

民法568条1項
強制競売における買受人は、第561条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる。

最高裁平成8年1月26日判決は、「 建物の強制売買で借地権を前提として売買が実施されたが、代金納付時点で借地権が存在しない場合は、買受人は建物買受けの目的を達することができない・債務者が無資力の場合には、民法568条1項・2項、566条1項・2項の類推適用で強制売買による建物の売買契約解除の上、売買代金の配当を受けた債権者に返還を請求できる」としています。

そのため、解答は◯となります。以上、ア=イ=オ=◯・ウ=エ=✖なので解答は4となります。

 

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