司法書士試験H30午前の部第18問【契約の解除】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法書士試験第18問を解説していきます。

司法書士試験H30午前の部第17問

第18問 契約の解除に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記 1 から 5 までのうち,どれか。 ア 債務の履行の催告と同時に,催告期間内に履行しないことを条件とする解除の意思表示をしても,この意思表示は無効である。 イ 当事者が契約をした主たる目的の達成に必須的でない付随的義務の履行を怠った場合であっても,相手方は,その履行を催告したのに相当期間内に履行がされないときは,契約の解除をすることができる。 ウ 売買の目的である土地について第三者が登記をした賃借権を有していたときは,買主は,当該土地の引渡しを受けた時から 1 年以内に限り,売買契約の解除をすることができる。 エ 買主が数人いる中古車の売買につき,引き渡された中古車に瑕疵があるために買主に解除権が発生した場合において,買主の一人の過失によって売買の目的である中古車を売主に返還することができなくなったときは,他の買主についても,解除権は消滅する。 オ 第三者の所有する土地を目的とする売買契約であることを契約時に知っていた買主Aは,売主Bから当該土地の引渡しを受けたものの,その後,当該土地の所有権の移転を受けることができなかった。この場合において,売買契約を解除したAは,Bに対し,当該土地の使用利益を返還すべき義務を負う。 1  アウ 2  アオ 3  イウ 4  イエ 5  エオ 出典 問題『http://www.moj.go.jp/content/001266146.pdf』 解答『http://www.moj.go.jp/content/001266144.pdf

アについて

民法541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

催告期間内に履行しないことを条件とする解除の意思表示をしても、その期間内に履行を行わなければ解除されることが明確になっています。

そうすると、債務者を不安定な地位に置くことはなく、その意思表示は有効になると考えられるため解答は✖となります。

イについて

判例:最高裁判決昭和36年11月21日

判決では「 当事者の一方が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠つたにすぎないような場合には、特段の事情がないかぎり、相手方は、その義務の不履行を理由として当該契約を解除することができない」と述べられます。

「目的達成に必要でない」付随的義務の履行を怠ったにすぎなければ、原則として義務不履行による契約解除はできません。

そのため、解答は✖となります。

ウについて

民法566条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

 

売買の目的物に賃借権がある場合において、契約の解除・損害賠償請求は事実を知ってから1年以内にする必要があります。

そのため、解答は✖となります。

エについて

民法544条2項 前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。

解除権が当事者の一人について消滅すれば、ややこしくならないように他の者についても消滅することになるため、解答は◯となります。

オについて

民法561条 前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。
民法545条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

判例:最高裁判決昭和51年2月13日

要旨では「 売買契約に基づき目的物の引渡を受けていた買主は、民法五六一条により右契約を解除した場合でも、原状回復義務の内容として、解除までの間目的物を使用したことによる利益を売主に返還しなければならない」と述べられます。

561条によって契約を解除しても、545条に基づき買主は原状回復義務を負うため解答は◯となります。

以上、エ=オ=◯・ア=イ=ウ=✖なので解答は5となります。

司法書士試験H30午前の部第19問