憲法判例【民法900条と憲法14条1項】最高裁平成7年7月5日判決

みなさん、こんにちは!

今日は、最高裁平成7年7月5日判決を解説していきます。

最高裁判決全文はこちらになります。

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争点

民法900条4号ただし書きと憲法14条1項の関係。

判決

民法について

「民法は、社会情勢の変化等に応じて改正され、また、被相続人の財産の承継につき多角的に定めを置いているのであって、本件規定を含む民法九〇〇条の法定相続分の定めはその一つにすぎず、法定相続分のとおりに相続が行われなければならない旨を定めたものではない

⇒必ず法定相続分の通りに相続を行う必要はない。

「すなわち、被相続人は、法定相続分の定めにかかわらず、遺言で共同相続人の相続分を定めることができる。また、相続を希望しない相続人は、その放棄をすることができる」

「さらに、共同相続人の間で遺産分割の協議がされる場合、相続は、必ずしも法定相続分のとおりに行われる必要はない。共同相続人は、それぞれの相続人の事情を考慮した上、その協議により、特定の相続人に対して法定相続分以上の相続財産を取得させることも可能である」

 

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「もっとも、遺産分割の協議が調わず、家庭裁判所がその審判をする場合には、法定相続分に従って遺産の分割をしなければならない」

遺言で相続分を定め、放棄することもできるし、協議で相続財産を取得させることも可能だが、家庭裁判所が審判をするときには法定相続通りに遺産分割をする

相続制度について

「相続制度は、被相続人の財産を誰に、どのように承継させるかを定めるものであるが、その形態には歴史的、社会的にみて種々のものがあり、また、相続制度を定めるに当たっては、それぞれの国の伝統、社会事情、国民感情なども考慮されなければならず、各国の相続制度は、多かれ少なかれ、これらの事情、要素を反映している」

⇒相続制度には様々なものがあり、定めるにはいろいろな事情・要素を反映させる必要がある。

「さらに、現在の相続制度は、家族というものをどのように考えるかということと密接に関係しているのであって、その国における婚姻ないし親子関係に対する規律等を離れてこれを定めることはできない。これらを総合的に考慮した上で、相続制度をどのように定めるかは、立法府の合理的な裁量判断にゆだねられているものというほかない

⇒相続制度は立法府の合理的な裁量にゆだねられている。

上記で示したように、規定の相続分の通りに相続が行われる必要があることを定めておらず、「遺言による相続分の指定等がない場合などにおいて補充的に機能する規定であることをも考慮」してみる。

 

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そうすると、「本件規定における嫡出子と非嫡出子の法定相続分の区別は、その立法理由に合理的な根拠があり、かつ、その区別が右立法理由との関連で著しく不合理なものでなく、いまだ立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えていないと認められる限り、合理的理由のない差別とはいえず、これを憲法一四条一項に反するものということはできないというべきである」としました。

⇒法定相続分の区別は合理的な根拠があり、立法裁量の限界を超えず、憲法14条1項に違反しない。

憲法24条1項について

「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する旨を定めるところ、民法七三九条一項は、『婚姻は、戸籍法の定めるところによりこれを届け出ることによつて、その効力を生ずる。』と規定し、いわゆる事実婚主義を排して法律婚主義を採用し、また、同法七三二条は、重婚を禁止し、いわゆる一夫一婦制を採用することを明らかにしているが、民法が採用するこれらの制度は憲法の右規定に反するものでないことはいうまでもない

民法が採用する法律婚主義・一夫一婦制は憲法に違反するものではない

「民法が法律婚主義を採用した結果として、婚姻関係から出生した嫡出子と婚姻外の関係から出生した非嫡出子との区別が生じ、親子関係の成立などにつき異なった規律がされ、また、内縁の配偶者には他方の配偶者の相続が認められないなどの差異が生じても、それはやむを得ないところといわなければならない」
法律婚主義採用の結果として、不利益が生じるとしてもやむを得ないものである
 
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まとめ

本件規定の立法理由

非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。これを言い換えれば、民法が法律婚主義を採用している以上、法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが、他方、非嫡出子にも一定の法定相続分を認めてその保護を図ったものであると解される

⇒本件規定は非嫡出子に一定の配慮がなされたものである。

本件規定について

「現行民法は法律婚主義を採用しているのであるから、右のような本件規定の立法理由にも合理的な根拠があるというべきであり、本件規定が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の二分の一としたことが、右立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないのであって、本件規定は、合理的理由のない差別とはいえず、憲法一四条一項に反するものとはいえない

立法理由との関連で不合理ではなく、裁量判断の限界を超えたものではないので、憲法14条1項に違反しない

 

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