憲法判例【日本新党当選繰上事件】最高裁平成7年5月25日
みなさん、こんにちは!
今日は、日本新党繰上当選事件を解説していきます。
最高裁判決全文はこちらになります。
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争点
除名によって繰り上げ当選した者の当選無効が認められるか。
判決
公職選挙法について
「選挙会が名簿届出政党等による除名を理由として名簿登載者を当選人となり得るものから除外するための要件として、前記の除名届出書、除名手続書及び宣誓書が提出されることだけを要求しており、それ以外には何らの要件をも設けていない」
「したがって、選挙会が当選人を定めるに当たって当該除名の存否ないし効力を審査することは予定されておらず、法は、たとい客観的には当該除名が不存在又は無効であったとしても、名簿届出政党等による除名届に従って当選人を定めるべきこととしている」
「そして、法は、届出に係る除名が適正に行われることを担保するために、前記宣誓書において代表者が虚偽の誓いをしたときはこれに刑罰を科し(法238条の2)、これによって刑に処せられた代表者が当選人であるときはその当選を無効とすることとしている(法251条)」
⇒当選人を定める際に除名の存否・効力の審査は予定されず、法によって除名が適正に行われることが担保されている。
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除名の選挙長・選挙会の審査対象を形式的な事項にとどめることについて
「すなわち、拘束名簿式比例代表制を採用したのは、議会制民主主義の下における政党の役割を重視したことによるものである」
「このような政党等の結社としての自主性にかんがみると、政党等が組織内の自律的運営として党員等に対してした除名その他の処分の当否については、原則として政党等による自律的な解決にゆだねられているものと解される」
これは共産党袴田事件から明らかです。
「政党等から名簿登載者の除名届が提出されているにもかかわらず、選挙長ないし選挙会が当該除名が有効に存在しているかどうかを審査すべきものとするならば、必然的に、政党等による組織内の自律的運営に属する事項について、その政党等の意思に反して行政権が介入することにならざるを得ない」
「政党等に対し高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をすることのできる自由を保障しなければならないという前記の要請に反する事態を招来することになり、相当ではない」
⇒除名の有効性を審査すると、政党等の意思に行政権が介入し、望ましくない事態を招いてします。
当選訴訟について
「政党等の内部的自律権をできるだけ尊重すべきものとした立法の趣旨にかんがみれば、当選訴訟において、名簿届出政党等から名簿登載者の除名届が提出されているのに、その除名の存否ないし効力という政党等の内部的自律権に属する事項を審理の対象とすることは、かえって、右立法の趣旨に反することが明らか」
まとめ
「したがって、名簿届出政党等による名簿登載者の除名が不存在又は無効であることは、除名届が適法にされている限り、当選訴訟における当選無効の原因とはならないものというべきである」
⇒除名の存否・効力を審理の対象とすると、立法趣旨に反してしまうため、適法になされていれば当選無効の原因にはならない。
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