司法試験H26公法系科目第19問―地方自治に関して

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H26大問19を解説していきます。

www.eityan-houritu.site

スポンサードリンク

 

〔第19問〕(配点:3)

地方自治に関する次のアからウまでの各記述について,aの見解とbの見解が両立する場合には1を,両立しない場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№35]から[№37])

ア.

a.憲法第29条第2項は,財産権の内容を法律で定める旨規定しているから,法律で個別的な委任がある場合を除いて,条例で規制することはできない。

b.財産権は全国的な取引の対象となる点で取引の安全を図る必要があるため,その規制は国の事務に属するが,地方的な特殊な事情があれば条例によっても規制できる。[№35]

イ.

a.憲法第95条が地方自治特別法に住民の過半数の同意を求めるのは,特定の地方公共団体の本質に関わるような不利益な特例を設けることを防止する趣旨である。

b.憲法第95条は,国会の単独立法権の例外を認めるもので,地方公共団体が独自の条例を制定する権限を有することの根拠規定の一つである。[№36]

ウ.

a.憲法第94条の「行政の執行」には租税の賦課・徴収が含まれているから,憲法は抽象的には地方公共団体の課税権を承認している。

b.地方自治法第223条が,地方公共団体は「法律の定めるところ」により地方税を賦課徴収できると定めているのは,地方公共団体独自の課税権を承認する趣旨である。[№37]

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/000123124.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/000123390.pdf

アについて

a の「法律で個別的な委任がある場合を除いて,条例で規制することはできない」と、b の「地方的な特殊な事情があれば条例によっても規制できる」の部分が一致していないため、解答は2となります。

 

イについて

憲法95条

一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

ここにあるように、特別法の制定には住民の過半数の賛成が必要になります。他の地方公共団体とは異なる法令を定めるわけで、その団体のみに不利益をもたらさないようにこうした「過半数」規定が設けられているものと考えられます。

また、特別法は「特定の地方公共団体のみ」という点で、国会単独立法の例外ということができ、独自の条例を定める根拠にすることもできるでしょう。

ここから、a と b の見解は両立していると考えられるので、解答は1となります。

ウについて

憲法94条

地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

「行政を執行する」というのは非常に抽象的ですが、その中に租税の賦課・徴収が含まれるのであれば、具体的にではないものの課税権を認めていると考えることができます。

地方自治法223条

普通地方公共団体は、法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収することができる。

地方自治法223条の趣旨は「地方公共団体は法律に基づく課税権を持つ」という見解になる。

このように、憲法94条・地方自治法223条は課税権を認める内容となっており、a と b の見解は相違するところがないと思われます。そのため、解答は1となります。

www.eityan-houritu.site