最高裁判決昭和38年3月27日判決 【地方自治とは何か】

みなさん、こんにちは!

今日は、地方自治について述べられた判決を解説していきます。

www.eityan-houritu.site

上記の問題は、今回の判示を引用した問題となっています。

 スポンサードリンク

 

争点

地方自治法281条の2第1項は、憲法93条第二項違反するか

 

憲法93条

地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。

日本国憲法第93条 - Wikipedia

 

地方自治法281条の2第1項

都は、特別区の存する区域において、特別区を包括する広域の地方公共団体として、第2条第5項において都道府県が処理するものとされている事務及び特別区に関する連絡調整に関する事務のほか、同条第3項において市町村が処理するものとされている事務のうち、人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から当該区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務を処理するものとする。

 『地方自治法第281条の2 - Wikibooks

判決

地方自治法93条2項

上記の通り、2項では地方公共団体が何であるかは明示していない。

しかし、「憲法が特に一章を設けて地方自治を保障するにいたつた所以のものは、新憲法の基調とする政治民主化の一環として、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務は、その地方の住民の手でその住民の団体が主体となつて処理する政治形態を保障せんとする趣旨に出たもの」としています。

この趣旨に沿っているときに、地方公共団体と言うためには法律で地方公共団体として取り扱われるだけでは足りないとしています。

そのうえで、「事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもつているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とする」とします。

そしてこうした地方公共団体としての実態を備えれば、憲法で保障される地方自治の権能を法律で奪うことは許されないとしました。

 

スポンサードリンク

 

 

以上より、東京都の特別区について考えていく。

東京都の特別区は、郡区町村編成法施行以後に、市町村のような完全な自治体としての地位を有していたことはなく、そうした機能を果たしたこともない。

地方自治制度の確立で区の法人格も認められたが、昭和18年7月施行の東京都制の下では都の下部機構に過ぎなかった。

しかし、東京都制の改正で区は区長公選制を採用し、地方自治法でも特別区は「特別地方公共団体」となり、原則として市に関する法律が適用された。

ただ、政治の実際面では区長の公選が実施されたにとどまり、その他に都政に変化はなく特別区の区域内の住民に対する行政の執行の範囲・権限は、市の場合と著しく趣を異にするところが少なかった

このことについて、以下に掲げる法律の規定に照らして、これを推認し得るに十分としています。 

地方自治法

・都は条例で特別区について必要な規定を設けることができる

・都知事は特別区に都吏員を配置することができる 

これに加え、東京都制では、都政時代に都が処理していた事務の多くが都に留保されていました。

また、特別法の規定においても法律上市に属する事務とされながら、東京都においては「重要な公共事務が特別区の権限からはずされ或いは特別区全体を一つの対象として取り扱い、都に市の性格と府県の性格とを併有せしめるものが、数多く認められ」ました。

 

スポンサードリンク

 

 

税の徴収について

特別区の財政上の機能は東京都制の改正で、自主財政権が与えられ独立して区税を賦課徴収できるようになった。

ただ、地方税法では、都の特別区は都の条例が定める都が課せる税の全部または一部を区税として課することが認められるだけで、独立税を課す場合には都の同意を必要としている。

つまり、都を独立の課税権を持つ地方団体としては扱わず、改正地方税法でもこの建前は変更されず、現在まで至っている。

このように、特別区の都制の一部改正で自治権の拡充強化が図られるが、地方自治法などの法律で自治権に制約が加えられているのはなぜか。

それは、東京都の戦後の経済成長・文化の興隆や、住民の生活が区の範囲を超えて他の地域に及ぶことも多く、「都心と郊外の昼夜の人口差は次第に甚だしく、区の財源の偏在化も益々著しくなり、二三区の存する地域全体にわたり統一と均衡と計画性のある大都市行政を実現」しようとする要請によるものとしています。

また、区が東京都という市の性格を有した地方公共団体の一部を形成していることに起因としています。

結論

区長の公選制が法律によって認められていると言えど、憲法制定当時・地方自治法改正当時に、憲法93条2項にいう「地方公共団体」と認められないとしています。

そして、区長の公選制を廃止して「これに代えて、区長は特別区の議会の議員の選挙権を有する者で年齢二五年以上のものの中から特別区の議会が都知事の同意を得て選任するという方法を採用した」といえど、それは立法政策の問題で、憲法93条2項に違反しないとしました。

全文は「裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

 

スポンサードリンク