司法試験民法短答式試験H27第5問【条件および期限】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H27民法第5問を解説していきます。

司法試験民法短答式試験H27第4問

〔第5問〕(配点:2) 条件及び期限に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№5]) ア.医学部に入学したAがBから金銭を借り入れた際に「借入金は私が医師になった時に返済する。」と約束していたが,その後,Aの父親が急死し,Aがその父親の事業を継がざるを得なくなったため医学部を中途退学した場合,Aは,Bに対する借入金の返還債務を免れる。 イ.家屋の賃貸人Aがその家屋の賃借人Bに対し,Bが滞納している賃料を所定の期限までに支払わない場合にはその家屋の賃貸借契約を解除する旨の意思表示をすることは,単独行為に条件を付することになっても許される。 ウ.AがBに対し「将来気が向いたら,私が所有する甲自動車を贈与する。」と約束したとしても,その贈与契約は無効である。 エ.AがBに対し「Bが医学部の卒業試験に合格したら,私が所有する甲自動車を贈与する。」と約束した場合,卒業試験の前にAが甲自動車を第三者Cに売却したときは,Bは,Aに対し,それにより生じた損害の賠償を請求することができる。 オ.AがBに対し「私の所有する乙土地の購入希望者をBが見つけることができ,Bの仲介により売買契約に至れば,その仲介報酬を支払う。」と約束した場合,Aが,Bの見つけてきた乙土地の購入希望者との間で,Bの仲介によらずに直接乙土地の売買契約を結んだときは,Bは,Aに対し,仲介報酬を請求することができない。 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ 出典 問題『司法試験H27民法短答式問題』 解答『司法試験H27民法短答式解答

アについて

判例では、「出世払いは不確定期限であってこれ以上出世できないことが明らかになれば、その時点で貸主は借金の返済を請求できる」としています。

そのため、Aは返還義務を逃れることができないので、解答は✖となります。

イについて

民法506条1項 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。

相殺・解除・取消し・追認などの単独行為に条件をつけると、相手方の地位を不安定にしてしまうため、506条1項によって原則的には認められていません。

ただ、その条件の内容が相手方の地位を不安定にするようなものでなければ、条件を付けることも許されていません。

イのように、一定期間内という期間が設けられてその間に債務を履行しないことを停止条件にする解除はその例外と考えられているため、解答は◯となります。

ウについて

民法134条 停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

条件の成就が「気が向いたら」という債務者の意思のみに関係するときは、その法律行為が無効となるため解答は◯となります。

エについて

民法128条 条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

条件成就前に利益を得る相手方を侵害するような行為は許されておらず、その履行を不可能にした場合には損害賠償請求権が発生することになります。

そのため、解答は◯となります。

オについて

民法130条 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

最高裁昭和39年1月23日判決では、 「山林売却斡旋依頼とともに判示内容の停止条件付報酬契約がなされた場合において、委任者が受任者を介せず右山林を他に売却したときは、受任者は条件が成就したものとみなして、約定報酬の請求ができる」と述べられています。

ここにあるように、委任者(A)が受任者(B)を介さずに土地を売却したときは、受任者は条件成就であるとみなして報酬の請求を行えます。

そのため、解答は✖となります。以上、ア=オ=✖・イ=ウ=エ=◯なので解答は2となります。

 

司法試験民法短答式試験H27第6問