司法試験民法短答式試験H27第19問【債務の履行と弁済】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H27民法第19問を解説していきます。

司法試験民法短答式試験H27第18問

〔第19問〕(配点:2) 債務の履行と弁済に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№19]) ア.安全配慮義務の違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は,その義務の違反により損害が発生した時から遅滞に陥る。 イ.弁済をすべき場所について別段の意思表示がない場合には,特定物の引渡しは,債権発生の時にその物が存在した場所においてしなければならないが,その他の弁済は債権者の現在の住所においてしなければならない。 ウ.弁済の費用について別段の意思表示がない場合には,債権者と債務者の双方が等しい割合でその費用を負担するが,債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは,その増加額は債権者が負担する。 エ.Aの所有する甲土地を,Bが建物の所有を目的として賃借し,Bが甲土地上に乙建物を建築して乙建物をCに賃貸した場合,BがAに対し甲土地の賃料の支払を拒絶しているときは,Cは,Aに対し甲土地の賃料の支払をすることができる。 オ.金銭消費貸借の借主が,元本,利息及び費用の総額に足りない金銭を貸主に弁済する場合には,それをまず元本に充当することを指定することができ,貸主が直ちに異議を述べない限り,その充当の指定は効力を有する。 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ 出典 問題『司法試験H27民法短答式問題』 解答『司法試験H27民法短答式解答

アについて

民法412条3項
  1. 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

最高裁昭和55年12月18日判決では、「 安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償債務は、期限の定めのない債務であり、債権者から履行の請求を受けた時に履行遅滞となる」とされています。

期限のない定めの債務は412条3項に基づいて履行の請求を受けたときから履行の遅滞となるので、解答は✖となります。

イについて

民法484条 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

特定物の引き渡しは債権発生時にその物が存在した場所、その他は債権者の住所で弁済することになるので解答は◯となります。

ウについて

民法485条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

交通費などの弁済の費用は債務者負担となりますが、債権者の責任で費用が増額した場合には増加分を債権者が負担することになります。

そのため、解答は✖となります。

エについて

民法474条2項
  1. 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。

最高裁昭和63年7月1日判決では「 借地上の建物の賃借人は、地代の弁済について法律上の利害関係を有する」とされています。

借地上の建物の賃借人は地代の弁済について利害関係を有する第三者であり、弁済を行うことができるため解答は◯となります。

オについて

民法491条1項
  1. 債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない。

元本が先ではなく、順次に費用・利息・元本に充当する必要があるため解答は✖となります。以上、ア=ウ=オ=✖・イ=エ=◯なので解答は4となります。

司法試験民法短答式試験H27第20問