司法試験民法短答式試験過去問H30第25問―【転貸借】

みなさん、こんにちは!

今日は、民法過去問H30の第25問を解説していきます。

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〔第25問〕(配点:2)
Aは,Bに対し,Aの所有する甲建物を賃料月額10万円で賃貸し,甲建物をBに引き渡した。その後,Bは,Cに対し,甲建物を賃料月額12万円で賃貸し,甲建物をCに引き渡した。この事例に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№25])
ア.AがBC間の賃貸借を承諾していた場合,Aは,Cに対し,甲建物の賃料として月額12万円の支払を請求することができる。
イ.AがBC間の賃貸借を承諾していた場合,Cは,甲建物の修繕を直接Aに対し請求することができない。
ウ.AがBC間の賃貸借を承諾していた場合において,AがBとの間で甲建物の賃貸借を合意解除したときは,Aは,Cに対し,甲建物の明渡しを請求することができる。
エ.AがBC間の賃貸借を承諾していなかった場合において,AB間の賃貸借が終了したときは,Aは,Cに対し,所有権に基づく甲建物の明渡しを請求することはできるが,AB間の賃貸借の終了に基づく甲建物の明渡しを請求することはできない。
オ.AがBC間の賃貸借を承諾していなかった場合,Aは,当然にAB間の賃貸借を解除することができる。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ

出典

問題『http://www.moj.go.jp/content/001258877.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001259697.pdf

アについて

賃借人が適法に賃借物を転貸した時は、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負うことになります(民法613条1項)、賃貸人は転借人に対して直接賃料支払い請求を行うことができます。

ただし、転借人の債務は原賃料(10万円)と転貸賃料(12万円)のいずれか低い方となります。そのため、解答は✖となります。

イについて

転借人は転貸人に対する義務を負うのみであって、目的物の修繕請求であったり費用償還を請求する権利を有していません。

そのため、賃貸人が転借者に対して直接義務を負うことはありません。

よって、解答は〇となります。

 

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ウについて

最高裁判決昭和37年2月1日では以下のように述べられています。

賃借人が賃借家屋を第三者に転貸し、賃貸人がこれを承諾した場合には、転借人に不信な行為があるなどして賃貸人と賃借人との間で賃貸借を合意解除することが信義、誠実の原則に反しないような特段の事由がある場合のほか賃貸人と賃借人とが賃貸借解除の合意をしてもそのため転借人の権利は消滅しない旨の原判決の見解は、これを正当として是認する

出典『http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/508/063508_hanrei.pdf

承諾のある転貸借であり、賃貸借を合意解除したとしても転借人の権利は消滅しないとされています。

よって、解答は✖となります。

エについて

本問題のような無断転貸借であっても、転貸人と転借人との転貸借契約は無効ではなく、その2者間の契約として有効であり、転貸人が賃貸人の承諾を得るというのが最高裁の考え方です。

この考え方に従うと、Aは賃貸借の終了を理由として明け渡しを請求することができないと解されるので、解答は◯となります。

オについて

無断賃貸や無断譲渡の場合には賃貸借契約を解除できますが、最高裁昭和28年9月25日判決では「背信行為と認めるに足らない特段の事情のある時」は契約を解除することができません。

そのため、解答は✖となります。

以上、ア=ウ=オ=✖・イ=エ=◯なので解答は3となります。

 

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