【所得税決定処分取消等請求事件】憲法14条平等原則との関係

みなさん、こんにちは!

今日は、所得税決定取消処分請求事件を解説していきます。

最高裁全文はこちらになります。

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争点

所得税法における区別が憲法14条1項に違反するか。

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

出典『日本国憲法第14条 - Wikipedia

判決

旧所得税法について

旧所得税法は、事業所得等に係る必要経費については、事業所得者等が実際に要した金額による実額控除を認めているのに対し、給与所得については、必要経費の実額控除を認めず、代わりに同法所定額による概算控除を認めるものであり、必要経費の控除について事業所得者等と給与所得者とを区別するもの

憲法14条1項について

法の下の平等の保障は「憲法の最も基本的な原理の一つであって、課税権の行使を含む国のすべての統治行動に及ぶもの」です。

しかし「国民には具体的に多くの事実上の差異が存」していて、「差異を無視して均一の取り扱いをすることは、かえつて国民の間に不均衡をもたらすものであり、もとより憲法14条1項の規定の趣旨とするところでは」ありません。

→「国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨で」あり「国民各自の事実上の際に相応して法的取扱いを区別することは、その区別が合理性を有する限り」右の条項に違反するものではありません

租税について

「今日では、国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え、所得の再分配、資源の適正配分、景気の調整等の諸機能をも有して」います。

「国民の租税負担を定めるについて、財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりではなく、課税要件等を定めるについて、極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らか」としています。

租税法の定立について

「国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないというべき」としました。

そうであるなら、以下のように結論付けています。

「租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができ」ません

よって「これを憲法一四条一項の規定違反するものということはできない」としました。

以上のように、所得税法で事業所得者と給与所得者を区別していたとしても、立法目的が正当・区別の態様が不合理でない限り合理性を否定できないとされた判決でした。

練習問題

正しければ1、誤っていれば2

 ウ.租税法の定立は立法府の政策的,技術的判断に委ねるほかないから,この分野における取扱いの区別は,立法目的が正当であり,かつ,区別の態様が立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,憲法第14条第1項に違反するとはいえない。(司法試験憲法短答式試験H27 第2問)

解答:1

www.eityan-houritu.site

 

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