【法廷内のイラスト画と肖像権】最高裁平成17年11月10日判決
みなさん、こんにちは!
今日は、法廷内のイラスト画と肖像権の関係性を見ていきたいと思います。
判例はこちらになります。
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事件
被告人は法廷内で姿を隠し撮りされました。
被告人はそのことに関して、肖像権の侵害を理由として編集長・出版社に対して慰謝料等の支払いを求める訴えを起こします。
さらに、写真を撮影した週刊誌は、被告人のイラスト・被告人を揶揄するような分s尿を掲載し、被告人はこれについても肖像権侵害を理由に慰謝料等の支払いを求める訴え起こしました。
争点
被告人の容ぼうなどを承諾なく撮影して公表することが違法となるか。
判決
最高裁は以下のように述べています。
「人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであ」り、「ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるものといえるかどうかを判断して決すべき」としました。
さらに「裁判所の許可を受けることなく被告人の動静を隠し撮りしており、その撮影の態様は相当なものとはいえない」。
→「本件の写真撮影行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えて、被上告人の人格的利益を侵害するもので、不法行為上違法である」とされました。
イラスト画での撮影について
写真は被撮影者の容ぼう等をありのままに撮影したものであるが、イラストは描写に作者の主観や技術が反映されている。
→公表されたら、作者の主観・技術を反映したものであることを前提とした受け取り方をされる。
そのため、「人の容ぼう等を描写したイラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を超えて不法行為上違法と評価されるか否かの判断に当たっては、写真と異なるイラスト画の上記特質が参酌されない」といけない。
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まとめ
最高裁は以下のようにまとめています。
イラスト画を新聞・雑誌等に掲載することは社会的に是認されたもので、「手振りを交えて話しているような状態が書かれたイラストを公表した行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えて被上告人の人格的利益を侵害するものとはいえない」としました。
→不法行為上違法であるとは評価されない。
しかし「被告人が手錠、腰縄により身体の拘束を受けている状態が描かれたイラスト画を公表する行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えて、被上告人の人格的利益を侵害するものであり、不法行為上違法と評価すべき」としました。
以上、見てきたように写真とイラスト画でも違う特質を参酌する必要があり、イラスト画の中でも異なる区別があり、不法行為となるイラスト・そうでないものに分けられていました。
また、被告人は肖像権の侵害を理由として訴えを起こしていますが、最高裁は「みだりに公表されない人格的利益」としているのみで、肖像権には言及していない点に注意しましょう。
練習問題
合っていれば〇、間違っていれば×で答えよ。
法廷内における被告人の容ぼう等につき,手錠,腰縄により身体の拘束を受けている状態が描かれたイラスト画を被告人の承諾なく公表する行為は,被告人を侮辱し,名誉感情を侵害するものというべきで,その人格的利益を侵害する。[№6](司法試験 H27 第4問 ア)
解答 〇
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