憲法判例【公衆浴場距離制限事件】と憲法22条
みなさん、こんにちは!
今日は、公衆浴場距離制限事件を解説します。
公衆浴場距離制限事件では公衆浴場に開業規制を設けていたことが積極目的規制にも消極目的規制にも当たらないことが重要になります。
参考は最高裁判決になります。
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争点
公衆浴場に距離制限を設けることは憲法22条に違反するかどうか
判決
公衆浴場は国民が生きていくうえで欠かすことのできない公共性をもった施設である。
そのため規制をせずに自由に設置させてその自由を規制したり、適正配置などの制限がない場合には、「その偏在及濫立を来たすに至るがごときことは、公共の福祉に反するものであ」る
↓
制限がないと公共の福祉に反するという目的からもこの公衆浴場に対し許可制を設けるのは憲法22条に違反していない
そして公衆浴場の設置を自由にした場合の状況について述べています。
公衆浴場が偏在した場合
国民が利用するときに、不便が生じるおそれがある
公衆浴場が濫立した場合
公衆浴場間で競争が生じてしまい、競争が生じると経営を経済的に不合理にすることで、浴場の衛生設備を低下させてしまう
公衆浴場の設置を自由にさせた場合に考え得る状況を踏まえてみると「公衆浴場の性質にかんがみ、国民保険及び環境衛生の上からできる限り防止することが望ましい」
↓
公共の利益を守るために規制が必要
また、戦後数年は今とは異なり1家庭に風呂が必ずしもない状況でした。
そのため「一般の生活に公衆浴場は欠かせないものであり、濫立がおこると過当競争や衛生面の低下が懸念される」
公衆浴場を利用するという公共の利益を守るための規制だから距離制限は職業選択の自由に反しない。
このように公共の利益・福祉のための規制であるため公衆浴場の距離制限は憲法22条に違反しないとしました。
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最初に述べたように今回の重要部分は公衆浴場の規制が積極目的規制なのか消極目的規制なのかということです。
国民の生命・健康を守るための規制で消極目的規制に思えそうです。
しかし、消極目的規制の場合は厳格な合理性の基準を用いるのに今回はそれが用いられていない。
じゃあ、積極目的規制かというと社会的地位の低い人、弱い人を保護せず積極目的規制ともいえない。
そのため、今回の判例の距離制限は積極目的規制・消極目的規制ではないと通説では考えられます。
練習問題 〇か×
「あなたのため」というパターナリズムに基づく規制に当てはまれば〇、当てはまらなければ×
①公衆浴場を自由に開設できるようにすると,公衆浴場が濫立し,浴場経営に無用の競争を生じさせ,ひいては浴場の衛生設備が低下することなどが考えられる。それゆえ,公衆浴場の濫立を防止するため,公衆浴場の適正配置を開設の許可要件とする(司法試験 H22 【第7問】 ア)
解答 ×
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