民法講座~占有権の取得
みなさん、こんにちは!
今日は、占有権の取得を解説していきます。
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占有権の取得
占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。『民法180条』
解説
占有権は、自己のためにする意思、つまり自分に権利を帰属させようとする意志をもって物を所持することで獲得できます。自己のためにする意思と「所持」という要件が占有権の取得には必要になります。
要件
①所持
所持というのは、その物に対しての事実的な支配状態のことをいい、「物理的に」物を所持している必要はなく、周りからみて所有しているということが分かればよいとされます。
②自己のためにする意思
利益を自分に帰属させる意思のことをいいます。この意思は、客観的に判断されます。(通説・判例)。
相続による承継
被相続者が占有していた物について、相続人がそれを所持・管理していない、または相続開始を知らなくても、当然に相続によって占有権が相続人に移るとされています最高裁判決44年10月30日)。
代理占有
占有権は、代理人によって取得することができる。『民法181条』
解説
占有権というのは、代理人(他人)を介して間接的に取得できます。
代理占有
例として、マンション・アパートなどで、賃借人が部屋などを所持しいているときの賃貸人の占有などが挙げられます。
占有補助者
代理占有者とは異なり、占有補助者は独自で占有を主張することができないため、占有権は認められていません。
代理占有が成立するための要件
①占有代理人が所持をすること
②占有代理人が本人のためにする意思を有すること
・占有は客観的に決められます
・自己のためにする意思と併存しても問題ありません
③本人と占有代理人との間に占有代理関係が存在すること
例)賃貸借など
代理占有の効果
・本人だけが占有権を取得可能
・占有に関する悪意・善意は、占有代理人について決定するとされ(大判大11・10・25)、本人が悪意である場合には、占有代理人も悪意になるとされました。
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現実の引き渡し及び簡易の引き渡し
占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。
『民法182条』
解説
占有物の譲渡について、1項では占有物の「引き渡し」という現実の引き渡しが、2項では占有物がすでに譲受人か代理人に所持されている場合、占有権の譲渡は意思表示による「簡易の引き渡し」によってなされるとしました。
占有改定
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。『民法183条』
解説
占有改定(占有の移転)というのは、譲渡人が譲受人に対して占有物を譲渡した場合に、譲受人の占有代理人としてその物を所持することを示す意思を表示して、占有権を譲渡するということです。
指図による占有移転
代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。『民法184条』
解説
本人が代理人に占有をさせている場合において、本人が第三者に占有物を譲渡し占有代理人に第三者のために占有物を占有することを命じ、それを第三者(譲受人)が承諾したときは占有権を取得することができます。
例えば、AのマンションをBが代理占有している場合に、C(第三者)に譲渡しBに引き続き代理占有することを命じ、それをCが承諾したらCは占有権を取得できます。
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占有の性質の変更
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。『民法185条』
解説
占有の性質上から占有者に所有の意思がない場合には、その占有者が自己に占有をさせたものに対して(その物を)所有する意思を示したり、新たな権原で所有の意思をもって占有を始めなければ、その時の占有の性質が変わることはありません。
例えば、賃借人をはじめとする他主占有者(所有の意思がない)は、自己に占有をさせている者に対して、「今日から俺が自分の物として占有する」と言ってしまえば他主占有から自主占有へと占有の性質が変更されることになります。
自主占有…自分で所有の意思をもって占有すること
他主占有…所有の意思を持たないで占有していること
権原…占有ができる要因・事実
新権原
・賃借人(他主占有者)が他主占有の対象たる物を買い取った場合、他主占有から自主占有に変更されます。
相続
①新たに相続された財産を事実上支配することによって占有を開始し、②相続人の占有に対して客観的な所有の意思が認められる場合には、相続も新権原に当たります(判例)。
自主占有と他主占有
時効取得を争う場合には、自主占有は自分自身が占有しているため可能ですが、他主占有の場合には取得時効は認められません。
そのため、他主占有による相続人は、外形的客観的にみてその占有が自主占有であることを証明する必要があるとされます(判例)。
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占有の態様等に関する推定
占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
『民法186条』
解説
上記で推定されるのは、善意・平穏かつ公然と占有していただけで、無過失は推定されません。そのため、10年で取得時効を主張する際は自身が「無過失」であることを立証する必要があります。
取得時効とは逆に、即時取得については、前に占有していた者の占有の権利が適法に有されていたものと推定されるため(民法188条)、無過失も推定されるとしています(判例)。
占有の承継
占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
『民法187条』
解説
取得時効でも説明しましたが、占有の承継人は自分の占有だけを主張してもいいですし、前の占有者の占有を合わせて主張することも可能になります。
ただ、前の占有者の占有も主張する場合には、瑕疵、つまり悪意や過失などを承継することになるため、取得時効の期間が遅くなる場合もあるので注意が必要になります。
判例において、承継人には相続人などの包括承継人にも187条の効果が及ぶこととしました。その際、自身の占有を主張してもよいし、被相続人の占有を主張してもよいとされました。
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