憲法判例【米健康食品会社脱税報道事件】民事事件における取材源の拒否

みなさん、こんにちは!

今日は、米健康食品会社脱税報道事件を解説します。

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争点

民事事件において、証言者である報道関係者が取材源についての証言を拒絶することができるか。

判決

まず、証言拒絶が定められる民事訴訟法を見ていきましょう。民事訴訟法196・197条では、特別な事情がある場合に限り証言拒絶を認めています。

197条に言う「職業の秘密」とは「その事項が公開されると,当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるもの」と判例では定められています。 

ただ、職業の秘密に該当するからといって当然に証言拒絶が認められるわけではなく、保護に値する秘密にのみ認められ、保護に値する秘密であるかどうかは、秘密の公表に不利益と迅速な裁判の実現との比較衡量で判断すべきとしています。

また、報道関係者の取材源が開示された場合には、報道関係者と取材を受けた者の信頼関係が損なわれ、将来的に自由な取材が不可能になり業務の妨げになることは間違いなく、取材源の秘密は職業の秘密に当たるとしています。

この点、取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは、取材源の公表による不利益やその程度などの諸事情と、民事事件の態様や取材源を必要とする程度などを比較衡量して決定すべきとしました。

 

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比較衡量の際に考慮する点

報道機関の報道が国民の知る権利に奉仕していることから、「事実報道の自由」や取材の自由は憲法21条の保障下にあることを考えると、取材源の秘密が「社会的に重要な価値を有する」との前提に立っています。

そうすると、当該報道が公共の利益に関するものであり、取材源の証言を認めるなどの事情がなく、さらに当該民事事件が社会的に影響の大きい事件で取材源の秘密を考慮しても迅速公正な裁判を実現すべきであり、証言を得ることが必要であるなどの事情が認められなければ、取材源の証言拒絶権が認められるとしました。

これらの事情を考慮した結果、本件判決では証言拒絶権が認められています。

民事事件では、重大な事件でない限り取材源証言拒絶権が認められますが、石井記者事件のような刑事事件では認められないことを区別して覚えておきましょう。

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練習問題

合っていれば〇、間違っていれば✖で答えよ。

報道機関の取材源は,一般に,それがみだりに開示されると将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることになるため,民事訴訟法上,取材源の秘密については職業の秘密に当たるので,当該事案における利害の個別的な比較衡量を行うまでもなく証言拒絶が認められる。[№7](司法試験H27 第四問イ)

解答:✖

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