司法試験民法過去問H29第9問【所有権】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験民法過去問の費用負担について解説していきます。

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〔第9問〕(配点:2)
物権についての費用負担,償金等に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№9]
ア.AとBが共有する土地の分割によって公道に通じない甲土地と公道に通じる乙土地が生じた場合,甲土地の所有者Aは,公道に至るため,Bの所有する乙土地を通行することができるが,その通行について償金を支払う必要がある。

イ.2棟の建物がその所有者を異にし,かつ,その間に空地があるときは,各所有者は,他の所有者と共同の費用で,その境界に囲障を設けることができる。

ウ.A所有の主たる動産とB所有の従たる動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権はAに帰属するが,BはAに対して償金を請求することができる。

エ.AとBが建物を共有する場合において,AがBの持分に応じた管理費用について立替払をし,Bに対して償還義務の履行の催告をしたにもかかわらず,Bがその義務を1年以内に履行しないときは,Aは,相当の償金を支払ってBの持分を取得することができる。

オ.Aが,その所有する甲土地の排水を通過させるため,甲土地より低地である乙土地の所有者Bが既に設けていた排水設備を使用し始めた場合,Aは,その利益を受ける割合に応じて,同設備の保存費用を分担する必要があるが,同設備の設置費用を分担する必要はない。

1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ

http://www.moj.go.jp/content/001224569.pdf 問題』

http://www.moj.go.jp/content/001225946.pdf 解答』

アについて

アの問題は、土地の分割によって生じた土地の通行権の問題となります。

通行権と言うのは、自分の土地が袋地であるために行動に出るために周りの土地を通行する権利のことをいいます。この場合、土地の通行で生じた損害(償金)は一年ごとに支払わなければなりません。

これを踏まえたうえで本問題をみると、甲土地に通じない土地Aと甲土地に通じるBがいて、Aが公道に出るためにB土地を通行する際は一見、償金を払う必要があるように思えます。

しかし、土地を分割して公道に通じる土地・通じない土地が生じた場合には、償金を払う必要はないため、Aの答えは「×」となります。 

イについて

イは、225条をそのまま問題にした形となります。二棟の建物の所有者が異なり、その建物の間に土地がある場合には、所有者が共同の費用で境界に囲障を設けることができるため、イの問題は「〇」となります。

ウについて

ウは、Aの動産とBの動産がくっ付いて分離が不可能となった場合に、その動産が誰の所有に属するか・Bは償金を請求できるかが争点です。

この点、243条では、主たる動産・従たる動産が付合してしまった場合、その動産の所有権は、主たる動産の所有者に帰属します。

動産が結合して所有権を失う従たる動産の所有者が償金を請求できないとすると、これはかなり酷な話です。そのため、248条では動産の付合で損失を受けた場合に、償金を請求することが可能とされています。

よって、ウの問題は「〇」となります。

 

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エについて

エは、共有物の管理費用を支払い、持ち分に応じてその管理費用を請求したが、その債務を履行してくれない場合に、相当の費用を払うことでその債務を履行しない者の持ち分を取得できるかが争点です。

この点、253条では、債務を履行しない場合に相当の償金を支払うことで、その者の持ち分を取得可能としているため、エの問題は「〇」となります。

共有物の費用を分担しない者の所有権を保障する必要はありませんから、このような規定があります。

オについて

オは、排水のために他人の施設を利用し、その施設の保存費用は支払って、設置費用は支払わなくていいのかが争点です。

この点、221条では、他人の工作物(排水施設)を使用する場合、工作物の設置・工作物の保存費用を分担しなければならないと規定しています。よって、オの答えは「×」となります。

よって、イ=ウ=エ=〇、ア=オ=×となるため答えは「2」となります。今回の部分は、所有権で学習が少なくなりがちなのでしっかり復習しておきましょう。

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