憲法判例【宗教法人オウム真理教解散命令事件】憲法20条信教の自由の関係
みなさん、こんにちは!
今日は、オウム真理教解散命令事件を解説します。
参考サイトは最高裁判決になります。
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争点
地下鉄サリン事件を引き起こしたオウム真理教に対し、宗教法人を解散するよう解散命令が出されました。
この解散命令が憲法で、20条に違反するのではないかが争点になります。
解散命令についての見解
①「解散命令によって宗教法人が解散しても信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させ、あるいは、これをあらたに結成することが妨げられるわけではな」い
↓
解散命令で解散してもその宗教は存続できる
②解散命令で財産が処分されることについては「これらの財産を用いて信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何等かの支障を生ずることがある得る」
↓
解散命令によるその宗教団体・信者への支障が、全くないわけではない
さらに、これについては「憲法がそのような規制を許容するものであるかどうかを慎重に吟味しなければならない」
その宗教団体・信者の行為に支障が生じるなら、その解散命令をしっかり検討する。
このように、解散命令でその団体や行為に支障が出るため、解散後も宗教は存続するが十分に検討する必要があるとしています。
③この解散命令は、「宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ、専ら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容喙する意図によるものではなく、その制度も合理的であるということができる」
↓
解散命令は信者らの宗教に口出しした、つまり干渉したものではない
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④サリンを生成したことについて「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱したことが明らか」
オウム真理教の信者が行った行為は、憲法によって保護される限度を超えた行為といえます。
⑤公共の福祉を害しないように対処するために、「抗告人を解散し、その法人格を失わせることが適切かつ必要であり、他方、解散命令によって宗教団体であるオウム真理教やその信者らが行う宗教上の行為に何らかの支障を生ずることが避けられないとしても、その支障は、解散命令に伴う間接的で事実上のものである」
その宗教団体・信者に生じる支障は、解散命令に伴う間接的なものである。
⑥つまり、「解散命令は宗教団体であるオウム真理教やその信者らの精神的・宗教的側面に及ぼす影響を考慮しても、抗告人の行為に対処するのに必要でやむをえない法的規制であるということができる」
オウム真理教に対する解散命令は、必要かつ合理的でやむをえないものであるといえます。※抗告人とは、オウム真理教のこと
以上のように、解散命令は公共の福祉のために必要で、それによる宗教団体の解散は間接的で事実上のものに過ぎないということになりました。
人の生命・健康を奪う行為は、憲法による信教の自由の保障の限度を超えており、これによる保障は受けられないとされた判例です。
確認問題 〇か×
①宗教法人の解散命令によって宗教法人を解散しても、信者は、法人格を有しない宗教団体を存続させたり宗教上の行為を行ったりすることができるので、宗教上の行為を継続するに当たりなんら支障はない。(司法試験 H28 【第5問】 ウ)
②宗教法人が法令に違反して著しく反社会的な行為を組織的に行ったため,裁判所から宗教法人法所定の解散命令を受け,法人格を失った宗教団体やその信者が宗教上の行為を継続する上で支障が生じても,その支障は間接的で事実上のものにとどまるので,やむを得ない。(司法試験 H26 【第5問】 ウ)
解答 ①× ②〇
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