民法法律行為~追認の方法と追認の要件

みなさん、こんにちは!

今日は、追認の方法・要件を紹介していきます。

 

 

取り消すことができる行為の追認

取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。『民法122条

解説

取り消すことができる行為を『民法120条』に規定する者が追認したとき、その法律行為はなかったものとして取り消すことができません。

120条で規定される者

行為能力を原因とした行為の取消し

・制限行為能力者(本人)

・制限行為能力者の代理人

・承継人(相続人など)

・同意権がある者(保佐人、補助人など)

詐欺・強迫を理由とした取消し

・瑕疵ある意思表示をした者

・その代理人

・承継人(相続人など)

制限行為能力、詐欺・強迫などを理由として取り消すことができる行為を、上記に規定される者が追認した場合にはその法律行為は有効となります。

追認というのはその法律行為がいったん成立しているものの、その行為が取り消すことができる法律行為であるため、その法律行為を確実に成立させるために行います。追認した後は、その法律行為は有効となります。

ただ、追認によって第三者を害することはできないので、第三者に対する関係は対抗問題として扱われることになります。

取消し及び追認の方法

取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。『民法123条

解説

取消し・追認の意思表示は、行われた法律行為の相手方に対して行われることとしています。

ただ、取消しの場合の相手方というのは法律行為の相手方であり、判例では相手方が第三者に権利を譲渡した場合でも、相手方とは第三者ではなく最初の法律行為の相手方だとしています。

 

 

追認の要件

  1. 追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。
  2. 成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。
  3. 前二項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。
民法124条

解説

一項について

追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、取消しの効力は生じないとされます。

例えば、制限行為能力を原因とした取消しならば、制限行為能力者が行為能力者となったり、詐欺・強迫を原因とする取消しならば、詐欺・強迫に気付いたなど取消しの原因が消滅しなければ追認することはできません。

二項について

成年被後見人は、成年被後見を取り消されて行為能力者となった後にその法律行為を了知した場合には、了知したあとでなければ追認することができません。

また、成年被後見人を含めた制限行為能力者やその代理人でも追認する場合には、その行為が取り消すことができる行為であると了知しなければ、追認はできないとされています。

三項について

法定代理人、保佐人・補助人は上記2項の規定による制限を受けずに、本人が制限行為能力者で制限能力者にならない前でも、有効に追認をすることができます。

ただ、成年被後見人は、たとえ法定代理人の同意を得ることができたとしても追認することはできません。これは、成年被後見人の行為能力から導かれていると考えていいでしょう。

法定追認

前条(民法124条)の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。 一  全部又は一部の履行 二  履行の請求 三  更改 四  担保の供与 五  取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡 六  強制執行 『民法125条

 解説

追認できる状態が到来し、取消しできる行為に関して上記1~6の行為が行われれば、その行為を追認したとみなされます。しかし、上記の行為時に「これは追認ではないよ!」と異議をとどめておくことで、その行為は追認したことにはなりません。

各項について

①全部または一部の履行

その法律行為の内容について、取消権者(債務者)が債務の全部・一部を履行したり、その取消権者が債権者として債務の受領などを受ける場合も含むとされています。

②履行の請求

取消権者が「債務を履行してくれ!」と相手方に請求する場合に限り、相手方から債務の履行の請求を受けた場合は含まれません。

③更改

契約の「更改」のことです。

④担保の供与

取消権者(債務者)自身が担保を供与する場合だけでなく、取消権者(債務者)が債権者として相手方から担保の供与を受けた場合も含んでいます。

⑤取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡

売買契約であれば、取消権者が債権者として代金債権を他者に譲渡する場合などです。

⑥強制執行

強制執行は、②の履行請求と同じように、取消権者(債務者)が相手方に対して行為の内容を強制執行をした場合に限り、取消権者が債権者として強制執行をされた場合が含まれません。

補足

125条は前条の124条の規定と関連しているため、「了知」に関する事実も規定があります。

成年被後見人は、追認・法定追認場合にその行為が取り消すことができるという了知が必要ですが、被保佐人・未成年者は法定追認に限り了知が不要としています。

また、125条の追認の規定は無権代理行為の追認に類推適用されることはありません(最判昭和54・12・14)

 

 

取消権の期間の制限

取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。『民法126条

取消権の時効

・追認できる時から五年間行使しない ・行為の時から二十年経過

この場合に限って取消権が時効によって消滅します。追認の規定を設けていますが、第三者の保護のためにこの規定が加えられています。

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