司法書士試験H29午前の部第9問【占有回収】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法書士H29午前の部第9問を解説していきます。

 

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第9問 占有回収の訴えに関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうち,どれか。

ア 動産甲の占有者Aは,Bの詐欺によって,Bに動産甲を現実に引き渡した。この場合において,Aは,Bに対し,占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることはできない。

イ Bは,Aが占有する動産甲を盗み,盗品であることを秘して動産甲をCに売却した。その際,Cは,動産甲が盗品である可能性があることは認識していたものの,動産甲が盗品であることを知ることはできなかった。この場合において,Aは,Cに対し,占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることができる。

ウ Aがその所有する動産甲をBに賃貸したが,Bは貸借期間が終了しても動産甲をAに返還しなかったことから,Aは実力でBから動産甲を奪った。この場合において,Bは,Aに対し,占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることができる。

エ Bは,Aが占有する動産甲を盗み,盗品であることを秘して動産甲をその事実を知らないCに売却した。その後,Cは動産甲をそれが盗品であることを知っていたDに売却した。この場合において,Aは,Dに対し,占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることができる。

オ Bは,Aが占有する動産甲を盗み,盗品であることを秘して動産甲をその事実を知らないCに貸し渡した。この場合において,Aは,Bに対し,占有回収の訴えにより動産甲の返還を求めることはできない。

1 アウ 2 アエ 3 イエ 4 イオ 5 ウオ

出典

問題『司法書士試験H29問題

解答『司法書士試験H29解答

アについて

民法200条1項
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。

判例では、欺かれたことによる意思表示は有効であって占有侵奪の事実はなく、元の占有者は占有回収の訴えで返還を求めることができないとされました。 そのため解答は◯となります。

イについて

民法200条2項
占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

判例:最高裁判決昭和56年3月19日

要旨では「 民法二〇〇条二項但書にいう『承継人カ侵奪ノ事実ヲ知リタルトキ』とは、承継人がなんらかの形で占有の侵奪があつたことについて認識を有していた場合をいい、占有の侵奪を単なる可能性のある事実として認識していただけでは足りない」と述べられます。

占有の侵奪があることを可能性と認識していただけでは足りないため、AはCに対して占有回収の訴えを提起して返還を求めることができません。 そのため、解答は✖となります。

ウについて

判例では、本権を有している者でも占有を奪ったのであるから、その者に対して占有回収の訴えを提起できるとしています。 そうすると、占有を奪われたBはAに対して訴えを提起できるため、解答は◯となります。

エについて

判例では、いったん善意の者の占有となれば、その後の者が悪意であっても占有回収の訴えを提起できないとしています。 そうすると、Cが善意でありCから購入した悪意のDに対しては占有回収の訴えは提起できないため、解答は✖となります。

オについて

民法200条
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

占有回収の訴えは特定承継人に対して提起することができず、本件ではCが侵奪の事実について善意であるため提起できません。

ただ、侵奪者(間接占有者)は占有回収の訴えの対象となるので、Bに対しては提起することができます。

そのため、解答は✖となります。 以上、ア=ウ=◯・イ=エ=オ=✖なので解答は1となります。

 

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