民法物権~占有権②占有訴権の4種類を解説
みなさん、こんにちは!
今日は、占有権②占有訴権を解説します。
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占有の訴え
占有者は、次条から第202条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。
解説
占有者は、占有の訴えを提起することができ、他人のために占有を訴えを提起できます。この訴えることができる権利を「占有訴権」といいます。
占有訴権というのは、これから202条までを見ていく中で分かるように、他人からの物権に対する侵害・妨害を排除したり、将来的に妨害を予防することができる権利です。これは、物を占有していれば占有訴権を有していると解されます。
占有保持の訴え
占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。『民法199条』
解説
占有を妨害されてしまったら、占有保持の訴えを提起することで妨害の停止・損害賠償を請求することができ、物権的妨害請求権と対応しています。
妨害の停止
現実に妨害されている状況を停止することで、現状の状態を回復することをいいます。この際、妨害者の故意・過失は不要とされ占有者は保護されやすくなっています。
損害賠償請求
損害賠償請求をする場合は、妨害の停止とは違って不法行為とみなすため妨害者の故意・過失が必要となります。
占有保全の訴え
占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。『民法199条』
解説
占有が妨害されている状況とは違い、妨害されるおそれ(可能性)があるときには、占有保全の訴えの提起をすることで妨害の予防・損害賠償の担保を請求できます。これは、物権的妨害排除請求権に対応しています。
要件
損害賠償を請求する際には、相手方の故意・過失は不要とされますが、妨害予防請求と損害賠償の請求は選択的であり(判例・条文)、どちらか一方しか請求できません。
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占有回収の訴え
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
『民法200条』
解説
占有を奪われた場合には、占有回収の訴えをすることで物の返還か損害賠償を請求できますが、特定承継人に対しては提起することができません。ただ、特定承継人が悪意の場合には提起することができます。
1項について
詐欺でだまされた場合や単に遺失した場合に限って占有の回収は認められず、占有者の意思に関係なく占有を奪われた場合に限って1項の適用の余地があります。
2項について
悪意の特定承継人であっても、善意の特定承継人に占有が移り、その善意の特定承継人から譲渡された悪意の特定承継人には占有回収の訴えを提起することができません。
承継人が侵奪の事実について知っていた場合というのは、占有の侵奪があったことを認識していた場合に限り、占有の侵奪の可能性を認識していたにとどまる場合には、占有回収の訴えをすることはできません(判例)。
占有の訴えの提起期間
占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。
『民法201条』
解説
占有保持の訴え
・妨害が存在している間または、妨害が消滅したときから一年以内に提起する必要がある
・工事によって占有物に損害が生じた場合は、工事から一年以内または工事が完了するまでに定期しないといけない
占有保全の訴え
妨害予防ですので、妨害の危険が存在している間という規定が設けられました。また、工事によって占有が妨害される危険があるおそれがあれば、占有保持と同じように但し書きが準用されます。
占有回収の訴え
占有を奪われた時から一年以内に占有回収の訴えを提起する必要があり、占有の侵奪を知った時からではなく、奪われた時から一年以内です。
そのため、占有侵奪を知ったときに一年が経過していたら占有回収の訴えはすることができません。
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本権の訴えとの関係
占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。
『民法202条』
解説
占有の訴えと本権の訴えとはそれぞれ別個の関係にあるため、同時に2つの訴えを提起することが可能になっています。ただ、占有の訴えを本権の訴えの理由に基づいて裁判をできません。
本権の訴えとは
本権とは質権・所有権・地上権などの権利のこと言い、それに基づく訴えを本権の訴えといいます。
2項について
Aは占有回収の訴えをBに提起しますが、Bは自身に所有権などの本権があることを理由にして、占有回収の訴えを否認することはできないということです。ただ、占有の訴えに対して本件の訴えを提起(反訴)することはできます。
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