憲法判例【義務教育の無償の範囲(憲法26条2項)】

みなさん、こんにちは!

今日は、義務教育の無償について述べている最高裁判決39年2月26日を解説していきます。

最高裁判決全文はこちらになります。

 

 

争点

義務教育の無償の範囲はどこまでか。

判決

憲法26条について

「すべての国民に対して教育を受ける機会均等の権利を保障すると共に子女の保護者に対し子女をして最少限度の普通教育を受けさせる義務教育の制度と義務教育の無償制度を定めている

「しかし、普通教育の義務制ということが、必然的にそのための子女就学に要する一切の費用を無償としなければならないものと速断することは許されない

「けだし、憲法がかように保護者に子女を就学せしむべき義務を課しているのは、親の本来有している子女を教育すべき責務を完うせしめんとする趣旨に出たものでもあるから、義務教育に要する一切の費用は、当然に国がこれを負担しなければならないものとはいえないからである

 
義務教育の無償を定めるが一切の費用を無償としなければならないという趣旨ではなく、義務教育に要する一切の費用を国が負担しないというわけではない。

憲法26条2項後段について

「『義務教育は、これを無償とする。』という意義は、国が義務教育を提供するにつき有償としないこと、換言すれば、子女の保護者に対しその子女に普通教育を受けさせるにつき、その対価を徴収しないことを定めたものであり、教育提供に対する対価とは授業料を意味するものと認められるから、同条項の無償とは授業料不徴収の意味と解するのが相当である

憲法の義務教育は無償とするとの規定は、授業料のほかに、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものと解することはできない

「もとより、憲法はすべての国民に対しその保護する子女をして普通教育を受けさせることを義務として強制しているのであるから、国が保護者の教科書等の費用の負担についても、これをできるだけ軽減するよう配慮、努力することは望ましいところであるが、それは、国の財政等の事情を考慮て立法政策の問題として解決すべき事柄であつて、憲法の前記法条の規定するところではないというべきである」

義務教育の無償とは対価の不徴収を定めたもので、授業料以外の費用を無償とするものではない。

その費用負担の配慮も可能であるが、それは憲法26条の規定するところではない。