司法試験民法短答式試験過去問解説H28第6問【物権的請求権】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法試験H28民法第6問を解説していきます。
スポンサードリンク
〔第6問〕(配点:2)
物権的請求権に関する次の1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。(解答欄は,[№6])1.A所有の甲土地上に権原なく乙建物を所有しているBがCに乙建物を売却した場合において,CがBからの乙建物の所有権移転登記を経由していないときは,Aは,Cに対し,乙建物の収去及び甲土地の明渡しを求めることができない。
2.A所有の甲土地上に権原なく乙建物を所有しているBがCに乙建物を売却し,CがBからの乙建物の所有権移転登記を経由した後,CがDに乙建物を売却した場合には,DがCからの乙建物の所有権移転登記を経由していないときであっても,Aは,Cに対し,乙建物の収去及び甲土地の明渡しを求めることができない。
3.Aがその所有する甲土地をBに賃貸し,Bが甲土地を自動車の駐車場として利用していたところ,甲土地の賃借権の登記がされない間に,AがCに対し甲土地を売却した場合において,CがAからの甲土地の所有権移転登記を経由していないときは,Bは,Cからの甲土地の明渡請求を拒むことができる。
4.A所有の甲土地に隣接する乙土地の所有者であるBが乙土地を掘り下げたために,両土地の間に高低差が生じ,甲土地が崩落する危険が生じている場合において,その危険が生じた時から20年を経過した後にAがBに対し甲土地の崩落防止措置を請求したときは,Bはその請求権の消滅時効を援用することができる。
出典
1について
最高裁昭和35年6月17日判決では 、仮処分前に家屋を未登記のまま第三者に譲渡して、その敷地を占拠していない保存登記名義人に対して、敷地所有者から敷地不法占有を理由として家屋収去請求することは許されないとしています。
理由はその時点で保存登記名義人がその土地を不法に占有していないからです。そのため、解答は✖となります。
2について
最高裁判決平成6年2月8日では「 甲所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した乙は、たとい右建物を丙に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、甲に対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない」とされています。
ここから、本問題であればAが建物の収去・明け渡し請求ができると解することができるので、解答は✖となります。
3について
最高裁昭和49年3月19日では「 賃貸中の宅地を譲り受けた者は、その所有権の移転につき登記を経由しないかぎり、賃貸人たる地位の取得を賃借人に対抗することができない」とされているので、解答は◯となります。
理由は、「本件宅地の賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有する上告人は本件宅地の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であ」って民法177条に該当するからとされています。
4について
本問題は所有権に基づく妨害排除請求になり、民法167条では「 債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する」とされているため、一見時効で消滅するように思えます。
ただ、これは「所有権という絶対的な権利から発生する権利ですので、時効により消滅」することはなく、所有権があれば請求可能となります。そのため、解答は✖となります。
参考:『所有権に基づく物件的請求権の消滅時効 宮田総合法務事務所』
スポンサードリンク