憲法判例【ノンフィクション『逆転』事件】憲法21条表現の自由
みなさん、こんにちは!
今日は、ノンフィクション『逆転』事件を解説します。
参考は最高裁判決になります。
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争点
人格的利益の侵害を理由に、損害賠償が認められるか。
本件書籍『逆転』において、被上告人の有罪判決で服役した前科が公表され、被上告人の妻はその事実を知りませんでした。
さらに、故郷以外で報道されることはなかったが、その事実が世間に広く知れ渡ったために、「精神的苦痛を被った」として上記の請求をしていました。
判決
前科の公表について
これは「名誉・信用」に関係することで、前科を公表されないことは「法的保護に値する利益を有するもの」
服役後には、これまでのように「一市民として社会に復帰することが期待される」ため、前科を公表されないことで社会の一員として生活していく利益を有する。
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前科の公表の例外
その前科などに関する事項は、社会の批判・関心の一つであるため「事件それ自体を公表することに歴史的又は社会的な意義が認められるような場合」と、社会に影響を及ぼす程度などによっては、その前科などの事実が公表されることは受忍すべきものである。
さらに、「公職にある者・候補者」についても「社会一般の正当な関心の対象となる公的立場にある人物である場合」には、前科などの事実の公表は受忍すべきものとしました。
上記を考慮して、様々な事情を考慮した結果、実名で前科等を公表されない法的利益が公表することによる利益に優先する場合は、「公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる」としました。
そのため、「表現の自由を不当に制限」することにはなりません。なぜなら、表現の自由は「基本的人権に優越するもの」ではないからです。
また、表現の自由は公共の福祉による制限を受けることからも、これは合理的な制限といえます。
さらに、
・被告人は上記で示した前科などを公表する場合には当たらない
・実名を使用した合理的な理由がない
・上告人は被上告人の無罪を主張するのが『逆転』の目的というが、その内容はその目的と全く異なるもの
上記の点を考慮するなら、前科等を公表されないことで「事実を公表されないことにつき法的保護に値する利益を有していた」ということができ、実名を公表することに合理的理由があったとはいえない。
また、実名を使用することで前科があると判断されるのは明らかで、上告人がこの事実を判断できなかったとは言えない。
そのため、上告人は「被上告人に対する不法行為責任を免れ」ることができないという結論に至りました。
表現の自由が、人格的利益の侵害また精神的被害によって制限されるとした判例でした。
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