司法試験憲法短答試験過去問解説H29第4問 【思想・良心の自由】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験過去問第4問を解説します。

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〔第4問〕(配点:3)
思想・良心の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからウの順に[№8]から[№10] 

ア.企業が従業員を採用するに際して,その者の在学中における団体加入や学生運動参加の事実の有無について申告を求めることは,その事実がその者の思想・良心と全く関係ないものではないから,違法である。[№8]

イ.市立小学校の入学式における国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏をする行為は,音楽専科の教諭にとって通常想定され期待されるものであり,当該教諭が特定の思想を有するということを外部に表明する行為であると評価することは困難なものである。[№9]

ウ.公立高等学校の卒業式における国歌斉唱の際に起立斉唱する行為は,学校の儀礼的行事における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,同校の校長が教諭に当該行為を命じても,当該教諭の思想・良心の自由を何ら制約するものではない。[№10]

 『http://www.moj.go.jp/content/001224568.pdf問題』

http://www.moj.go.jp/content/001225947.pdf解答』

アについて

アの問題は、三菱樹脂訴訟の判決になります。

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三菱樹脂訴訟では、学生が管理職候補として入社した後、学生が特定の団体に加入していたことについて虚偽の報告をしていたため、特定団体の加入を理由に契約を取り消したことが思想・良心の自由を侵害しないかが争点となりました。

判決では、採用の可否にあたり特定の団体への加入を申告させるのは違法ではなく、契約の解除も合理的な範囲で認められるとしました。よって、アの答えは「2」となります。

イについて

イは、ピアノ伴奏拒否訴訟の問題となります。

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ピアノ伴奏拒否訴訟では、ピアノ伴奏が思想良心の自由の表明に当たるかが争点となりましたが、ピアノ伴奏は音楽科の教諭に当然期待されるものであるため、思想良心の自由の表明には当たらないとしました。

ピアノ伴奏をしていることで、特定の思想を持っているとは判断できませんよね。よって、答えは「1」となります。

ウについて

ウは、起立斉唱命令拒否事件の問題です。

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起立斉唱命令拒否事件では、起立して斉唱しなさいという命令によって国家の起立斉唱が義務付けられたことが、思想良心の自由のを制約しないかが争点となりました。

この点、最高裁は起立斉唱が儀礼的な所作として認識され思想の表明に当たらず、起立斉唱命令に違法性はないとしながら、思想・良心に間接的な制約があることを否定していません。よって、ウの答えは「2」となります。

今回の問題は、思想・良心の自由に関する有名な判例ですので、初見だった方はこれを機に判例を覚えていただければと思います。

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