憲法判例【「石に泳ぐ魚」出版差止請求事件】憲法21条1項の事前差し止め

みなさん、こんにちは!

今日は、「石に泳ぐ魚」出版差止請求事件を解説します。

参考は最高裁判決になります。

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争点

プライバシー権と名誉権に侵害を根拠とし出版差し止め請求が認められるか。つまり、小説を事前差し止めすることで憲法21条1項に違反しないかが争点です。

本件では、描写される人物の顔面の腫瘍について「烈な表現」がされていた。

また、これを読んだ被上告人は自分の人格が否定されたと感じていました。 

判決

①人物

石に泳ぐ魚に描写されている人物と本件被上告人は、同人物だと推定可能であり、名誉棄損、プライバシー権侵害が認められる。

②人格的利益を侵害された者の取り得る行為

「人格権に基づき,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当」であるため、差し止め請求が可能と言えます。

③差し止めが認められるのは

「侵害行為の対象となった人物の社会的地位や侵害行為の性質に留意しつつ,予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべき」

差し止めを行う際は、侵害者側の不利益と被侵害者の利益を考慮しなければならない。

 

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④差し止めについて

「侵害行為が明らかに予想され,その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり,かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるとき」には、差し止めは是認される

この部分の判決は、北方ジャーナル事件の判決を引用したかたちとなります。 

⑤出版による影響

被上告人は「公的立場」の者ではなく、その書籍の表現内容は「公共の利害」に関しない。

出版がされた場合

被上告人の精神的苦痛が増加し、生活を送ることが困難になる。

当該小説が読まれた場合

被上告人の精神的苦痛が増加し、被上告人の生活が害される

このように、公共の利害に関係しない被告人の私的な事情を含む小説の公表で、公的立場にない被上告人のプライバシー、名誉が侵害されたことは明らか。

この人格権をもとにした差し止め請求は憲法21条1項に違反せず、なんら違法なものではないと結論が出されました。

 

事前差し止めについてはこちらの判例もご覧ください。

www.eityan-houritu.site

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