憲法判例【「悪徳の栄え」事件】憲法21条表現の自由

みなさん、こんにちは!

今日は、「悪徳の栄え」事件を解説します。

参考は最高裁判決になります。

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争点

①出版した書籍がわいせつ性があることを理由に表現の自由を制限を受けることが許されるか 

②第一審が無罪判決を言い渡したが、それについて何ら事実関係を調査することなく、破棄し控訴裁判所が有罪判決を下したことが判例違反になるか。

判決1

①文書のわいせつ性

その文書が芸術性などを持ちそれがわいせつ性を緩和することはあり得ます。

ただ、わいせつ性が微弱な程度まで緩和されなければ、その文書がいくら文化・芸術的な価値があるとしても、「わいせつ性のある文書」として取り扱われることを避けられない。

②わいせつな文書の規制

わいせつな文書を規制するときは、その文書の「芸術的・思想的価値自体」を評価するものではないため、その文書を規制しても思想などを統制するものではない。

①・②を考慮すると、「文化的・芸術的価値」を持つ文書でも、わいせつ性のある文書として処罰されることはありうる。

しかし、「間接的にではあるが芸術や思想の発展が抑制されることになるので、猥褻性の有無の判断にあたつては、慎重な配慮がなされなければならない」

いくらわいせつ性のある文書だからといって、むやみに規制しすぎると思想などを統制することになります。 

そのため、それには慎重性が求められます。

 

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③文章のわいせつ性

その文書の一部の文章を取り出して、その文章にわいせつ性があると判断してはいけません。

その文章は文書全体とかかわりを持つものであるから、総合的に判断されなければならないとします。

ただ、一部の文章を取り出してそれを全体の文章と照らし合わせてわいせつ性があると判断したなら、その判断は正当とされる。

上記を考慮して、本件文書へのわいせつ性を理由にした制限が憲法21条、23条に違反するかについて考えます。

学問の自由・表現の自由は、公共の福祉による制限を受けることがあり、このわいせつ文書への制限は「性生活に関する秩序および健全な風俗を維持」して、国民生活を守るという公共の利益のために、許されるものである。

そのため、わいせつ性のある文書への制限は憲法21条・23条には違反しない

争点2

現行法の下での文書のわいせつ性の判断は、「裁判官がその文書自体につき社会通念にしたがつて判断するところに任されてい」て法律行為というべきものである。

また、第一審の調査が十分ならそれを基に新たに判断を下すのは可能である。

その判断の際の社会通念なるものは、一般人の感受性などを基にすることも可能であるが、それは参考でしかない。

そのため、上記事実を考慮すると第一審の判決を破棄し新たな判決を下したのは、判例違反になるものではない。

このように、わいせつ性のある文書の規制は憲法21条・23条には違反せず、控訴審が新たに判決を下したのは判例違反になりませんでした。

 

わいせつ性の判例についてはこちらもご覧ください。 

www.eityan-houritu.site

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