憲法判例【三菱樹脂訴訟】私人間適用説

みなさん、こんにちは!

今日は、三菱樹脂訴訟を解説していきます。

今回の訴訟では私人間、つまり国民の間に憲法が適用されるのかが重要です。 

なぜなら憲法は国家の暴走を制限するものであり、通常国家と国民の間に適用されるものです。

しかし、三菱樹脂訴訟は国家と国民の間の適用でなく、私人間の憲法の効力(私人間効力)が争われました。

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争点

企業(三菱樹脂側)が労働者(面接来た者)に特定の団体に所属していたかを申告させた。

特定の団体に所属していたことを理由にした雇用拒否が、憲法14条・19条に違反しないかが争われました。

判決

最高裁は、憲法14・19条が「直接私人相互間に適用されるものではない」とし、憲法は私人間に適用されないこととしました。

企業が労働者を拒否したことについて

「企業者が特定の思想、信条を有する労働者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも当然に違法とすることができない」

企業は労働者を自由に選ぶことができると認めた。

特定の団体に所属していたか申告させたことについて

「労働者を雇い入れようとする企業者がその採否拒否にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためにその者からこれに関する事項についての申告を求めることは違法とはいえない」

申告はその思想・信条の調査には当たらない

 

契約の解約権の行使について

「趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合のい許されるものと解すべき」

当然ながら、解約権は合理的な範囲において認められるとした

このように、今回の三菱樹脂側の雇用拒否には、違法性はなかったということです。特定団体に所属していたか否かの申告は、憲法違反ではないと覚えておきましょう。

 

確認問題 〇か×

①企業者は、雇用の自由を有するから、労働者の思想、信条を理由として雇い入れを拒んでも当然に違法ということはできないが、労働者の採否決定に当たり、その思想、信条を調査し、労働者に関連事項の申告を求めることまでは許されない。(司法試験 H28 【1】ア)

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②企業が従業員を採用するに際して、その者の在学中における団体加入や学生運動参加の事実の有無について申告を求めることは、その事実がその者の思想・良心と全く関係ないものではないから、違法である。(司法試験 H29 【第4問】 ア)

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解答 ①× ②×

 

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