憲法判例【堀木訴訟】年金の併給禁止規定・憲法14条・15条

みなさん、こんにちは!

今日は、堀木訴訟を解説します。

最高裁判決全文はこちらになります。

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争点

当時の児童扶養手当制度に公的年金と手当の併給禁止規定がされていたのは憲法14条、15条に違反するか。 

当該原告は国民年金法に該当する者で障害福祉年金と児童扶養手当を申請していましたが児童扶養手当のみ却下されていました。

判決重要フレーズ 

憲法25条の規定について

1項

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」

 ↓

福祉国家の理念に基づき,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものである」

2項

「国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」

 ↓

「福祉国家の理念に基づき,社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものである」あくまで、憲法25条1項、2項の規定は国の責務だということを覚えておきましょう。

そして、1項は国の国民に対する義務を規定してはおらず2項のことを実現することで個々の生活権を拡充していくとしました。 これは、食糧管理法事件からも明らかです。

また、憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活」は「きわめて抽象的・相対的な概念」であるため、実現するためには様々な事情を考慮しなければならない。

この規定を立法化する際には「国の財政事情を無視することができ」ないとした。

それに加えて、「高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする」としています。

つまり、それを具体化するために立法措置を担う国に一定の裁量権を認めるというべきであり「それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合を除」いて、裁判所が審査する対象にはなりえないとしました。

これを踏まえて併給禁止規定をみていくと

一般に,社会保障法制上,同一人に同一の性格を有する二以上の公的年金が支給されることとなるべき,いわゆる複数事故において,そのそれぞれの事故それ自体としては支給原因である稼得能力の喪失又は低下をもたらすものであっても,事故が二以上重なったからといって稼得能力の喪失又は低下の程度が必ずしも事故の数に比例して増加するといえないことは明らか

上記の場合において供給調整を行うかは国会の裁量にゆだねられている。

この種の立法における給付額の決定も,立法政策上の裁量事項」で給付額が低額という理由から必ずしも憲法25条に違反しない。

受給できる者とできない者の差別に対しては、「本件併給調整条項の適用により,上告人のように障害福祉年金を受けることができる地位にある者とそのような地位にない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別を生ずることになるとしても」これは諸政策などを判断すると憲法14条に違反しているとはいえないとしました。

 

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話が長くなりましたが併給禁止規定などは立法府の裁量に任されている。

そのため、それが明らかに合理性を欠く場合には司法審査の対象となることを覚えておきましょう。

線で強調した部分は試験でも頻出なのでしっかり復習しましょう。

確認問題 〇か×

①国民年金制度は、憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障上の制度であるから、同条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱、濫用とみざるを得ないような場合を除いて、裁判所が審査判断するに適しない事柄であり、何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いがあっても、憲法14条違反の問題は生じない。(司法試験 H29 【10】 ア)

②障害基礎年金の受給に関し,保険料の拠出要件を緩和するか否かは国の財政事情等に密接に関連するから,保険料負担能力のない20歳以上60歳未満の者のうち学生とそれ以外の者との間に障害基礎年金の受給に関し差異が生じていたとしても,不合理とはいえない。(司法試験 H26 【第10問】 イ)

解答  ①×  ②〇

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