憲法判例【共産党袴田事件】と一般市民法秩序の関係

みなさん、こんにちは!

今日は、共産党袴田事件を解説します。

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争点

党規律違反で処分された袴田氏が党所有の家屋に移住していたため、党が明け渡しを求めて提訴。 

政党の党員に対する除名処分が司法審査の対象となるかが争点となります。

判決

「政党の内部的規律に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべき」とします。

ここから「政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として事理る的な解決に委ねるのを相当」としています。

以上より、「政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審査権は及ばない」としました。

また、「右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続きに則つてされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られるもの」とします。

こうしたうえで、審理に関して以下のように述べています。

除名を理由として、「本件建物の明け渡し及び賃料相当損害金の支払いを求めるもの」であり「右請求が司法審査の対象なる」とします。

しかし「請求の原因としての除名処分は、本来、政党の内部規律の問題として自治的措置に委ねられるべきもの」です。

そのため「その当否については、適正な手続きを履践したか否かの観点から審理判断されない」といけません。

以上より「所論の点に関する事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、右事実関係によれば、被上告人は、自律的規範として党規約を有し、本件除名処分は右規約に則つてされたものと」言えます。

「右規約が公序良俗に反するなどの特段の事情のあることについて主張立証もない本件においては、その手続きには何らの違法もないというべきであ」り、「右除名処分は有効」としました。

 

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まとめ

正当の内部的自律権に関する行為は、政党の自律的解決に任せるものであり、一般市民法秩序と関係を成さないような政党内部の問題にとどまる場合は、裁判所の審査権は及びません。

つまり、本件のように一般市民法秩序と関係を成すような政党内部の問題にとどまらなければ、司法審査の対象となるということです。

 

練習問題

ア.政党の党員が,その政党の存立や秩序維持のために,自己の権利や自由に制約を受けることがあることは当然であり,政党が組織内の自律的運営として党員に対して行った処分の当否については,原則として自律的な解決に委ねるのが相当である。
イ.政党が党員に対して行った処分が,一般市民法秩序と直接の関係を有しない政党の内部的な問題にとどまるものである場合,裁判所は,その処分を司法審査の対象とするか否かについて,処分の内容や制約される党員の権利の性質等を考慮して,個別に判断するべきである。
ウ.政党が党員に対して行った処分が,党員の一般市民としての権利利益を侵害すると認められる場合,その処分は司法審査の対象となり,裁判所は,政党の有する内部規律に関する決定権に照らしてその処分の内容が合理的か否かについて審査するべきである。

出典は『司法試験過去問解説平成28年憲法短答式試験第18問』となります。

解答(ア=1、イ=2、ウ=2)

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