憲法判例―〔住基ネット事件〕プライバシーとの関係性―最高裁平成20年3月6日判決

みなさん、こんにちは!

今日は、住基ネット事件を解説していきます。

判決全文はこちらになります。

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争点

住基ネットによる個人情報の管理や利用はプライバシー権を侵害するか。

判決

住基ネットによって管理・利用される本人確認情報について

「氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報に,住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない」とします。

そして「このうち4情報は,人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり,変更情報も,転入,転出等の異動事由,異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので」である。

そのため「これらはいずれも,個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない」としました。

こうした情報について

「住基ネットが導入される以前から,住民票の記載事項として,住民基本台帳を保管する各市町村において管理,利用等され」てきた。

さらには「法令に基づき必要に応じて他の行政機関等に提供され,その事務処理に利用されてきたもので」した。
また「住民票コードは,住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等を目的として,都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割り当てたものである」

→「上記目的に利用される限りにおいては,その秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない」としました。

 

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住基ネットによる情報の管理利用について

「法令等の根拠に基づき,住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当
な行政目的の範囲内で行われているものということができる」とします。

さらに

  • 「住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険はないこと」
  • 「受領者による本人確認情報の目的外利用又は本人確認情報に関する秘密の漏えい等は,懲戒処分又は刑罰をもって禁止されていること」
  • 「住基法は,都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を,指定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置すること」

など「として本人確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じていることなどに照ら」すと・・・

→「住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり,そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない」としました。

まとめ

行政機関が住基ネットにより住民である被上告人らの本人確認情報を管理,利用等する行為は,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできず,当該個人がこれに同意していないとしても,憲法13条により保障された上記の自由を侵害するものではないと解するのが相当」としました。

以上のように、住基ネットによって住民らの情報を管理・利用する行為はプライバシーの侵害にはならないとされました。

 

司法試験でも出題されています。

www.eityan-houritu.site

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