憲法判例【泉佐野市民会館事件】集会の自由の関係性

みなさん、こんにちは!

今日は、泉佐野市民会館事件を解説していきます。

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争点

上告人らは当該会館のホールで「関西新空港反対全国総決起集会」を計画しており、ホールの利用許可を申請。

ただ、当該会館は「泉佐野市民の文化、教養の向上を図り、併せて集会等の用に供する目的で設置」されたものでした。

そのため、市長は市民会館の利用を拒否。拒否の理由とした条例のうち、「公の秩序をみだすおそれがある場合」の意義と憲法21条の関係が問題となりました。

上告人の行動

上告人らは関西空港に反対はしていたが、決起集会などは平穏に開催しており危険な側面は見られなかった。

しかし、空港の工事着手が進むとだんだん過激になって逮捕者が出たりしたため、商店街の人々もデモ行進に不安を覚えるようになった。

実際、当該会館の利用拒否後の海浜での決起集会には、数千人が集まったという事実も存在していた。

これらの上告人の行動をもとに、利用拒否が集会の自由を侵害するかみていきます。

地方自治法

244条では、正答な理由なく利用を拒否してはならず、差別的取扱いをしてはならない旨定められています。

また、集会ための施設であれば、その施設の目的に反しない限り住民はこれを利用でき、被上告人のような管理人が正当な理由なく利用を拒否するようであれば、それは住民の集会の自由を侵害していることになる。

そのため、利用拒否が集会の自由を侵害するかどうかについて考える必要があります。

 

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判決

管理者

施設の管理者は、その施設の目的などにに応じて、公共の施設としての使命・目的を達成することができるように管理権を行使する必要がある。

利用拒否できる場合

その施設を集会に供することで他の基本的人権を侵害し、公共の福祉が制限される場合に限られます。

その場合には、人権を侵害する危険を回避するために、「集会の開催が必要かつ合理的な範囲で制限を受けることがある」としました。

合理的な制限か判断する時

集会の自由の重要性と、集会を開催することによる他の基本的人権の内容・侵害の危険性などを較量して決定するとしました。

この較量で制限が合理的なものである限りは、集会の自由を不当に制限しないうえ、検閲にも当たらず憲法21条に違反しないとしました。

「公の秩序をみだすおそれのある場合」の意義

以上から、利用を拒否した文言を考えていくと上記の文言は広義ではあるものの、集会の自由を保障するより、開催することによる人の生命などに対する侵害の危険を「防止することの必要性が優越する場合をいう」としました。

この危険性は具体的に差し迫ったものであることが必要であると解すれば、この条例の制限は基本的人権を侵害を回避・防止するために必要かつ合理的として、憲法21条に違反しないとしました。

 

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判決②

利用拒否する際の評価

利用拒否をする際に団体の性格を考慮することは憲法に反して許されないが、本件は、集会を開催することで差し迫った危険が実現するのを回避するのを目的としていました。

施設の管理人がそれを回避するのは、状況からしてやむを得ないことであり必要かつ合理的な制限でした。

また、当該グループが平穏に集会を実施しようとしているのに利用を拒否することも許されませんが、当該グループが過激な活動を行っていたことは明らかでした。

まとめ

以上の様に、本件の利用拒否処分は団体の性格を考慮したものではなく、当該団体が抗争を繰り返していたという客観的事実からみて、グループ以外の住民の生命・財産などを侵害する危険が差し迫っており、それを具体的に予見されることを理由としているとしました。

そのため、本件の利用拒否処分は憲法21条・地方自治法244条に違反しないとしました。

 

司法試験でも出題されています。

www.eityan-houritu.site

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