司法試験民法過去問解説H29第1問【未成年者の法律行為】

みなさん、こんにちは!

今日は、民法の過去問解説を行います。 

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〔第1問〕(配点:2) Aが19歳で,親権に服する男性であることを前提として,次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№1])

ア.Aがその親権者から営業を行うことを許可された後に親権者の同意を得ずに売買契約を締結した場合には,その売買契約がその営業に関しないものであっても,Aは,その売買契約を取り消すことができない。

イ.Aの親権者が,新聞配達のアルバイトによりAが得る金銭の処分をAに許していた場合において,Aがそのアルバイトによって得た金銭で自転車を購入したときは,Aがその売買契 約を締結する際に親権者の同意を得ていないときであっても,Aは,その売買契約を取り消すことができない。

ウ.Aがその親権者の同意を得ずにAB間に生まれた子を認知した場合であっても,Aは,その認知を取り消すことができない。

エ.Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合でも,Aが成年に達するまでは,家庭裁判所は,Aについて後見開始の審判をすることができない。

オ.Aが相続によって得た財産から100万円をBに贈与する旨の契約を書面によらずに締結した場合において,書面によらない贈与であることを理由にAがその贈与を撤回したときで も,Aが贈与の撤回について親権者の同意を得ていなかったときは,Aは,贈与の撤回を取り消すことができる。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ

  『司法試験問題 H29』 『司法試験解答 H29

アについて

未成年者は、制限行為能力者ですから行為能力が制限され、法定代理人らの同意がないと法律行為を行うことができません。しかし、この行為には例外があり、例外時は親権者の同意がなくても有効に法律行為を行うことができます。

未成年者の有効な行為

単に権利を得、または義務を免れる行為(5条1項但し書き)

例)負担のない贈与や贈与の撤回など

 

・処分を許された財産の処分行為(5条3項)

例)アルバイトで稼いだお金など

 

・許された営業に関する行為(6条)

例)オークションなど

 

・認知、遺言、氏の変更など身分に関する行為は可能 

・法定代理人の同意を得ないで行った行為の取消し(5条2項・120条1項)

 

本問題で問われているのは、6条の営業に関する行為です。問題文を見ながら正誤を確かめてみましょう。「Aがその親権者から営業を行うことを許可された」ならば、Aは以後自由に営業を行うことが可能になります。

その後「親権者の同意を得ずに売買契約を締結した」ため、親権者の同意を得ないと行動できない未成年者のこの行為は無効となります。しかし、営業に関する行為であれば有効な行為になります。

「その売買契約が営業に関しないもの」だということは、営業を行うことを許可されていたのに営業に関係のない売買契約を締結していますから、Aはその売買契約を取り消すことができます。よって、アは一番最後が間違っているため答えは「×」になります。

②イについて

本問題では、上記で挙げた未成年者の行為のうち、処分を許された財産の処分が問題となります。

「Aの親権者が、新聞配達のアルバイトによりAが得る金銭の処分をAに許していた」なら、Aは親権者の同意なしにお金を使うことができます。そして、そのお金でAは自転車を購入しています。

「Aがその売買契約を締結する際に親権者の同意を得ていないときであっても、Aは、その売買契約を取り消すことができない」は、問題文の最初でAは親権者により財産処分を許されていて、その場合は同意がなくても有効に法律行為を行えます。

そのため、親権者の同意がないことを理由に有効な法律行為を取り消すことができず、イの正解は「〇」ということになります。

 

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③ウについて

ウの行為は、最初に挙げた未成年者の行為のうち4つ目の行為に当たります。

「Aがその親権者の同意を得ずにAB間に生まれた子を認知した場合」には、認知は未成年者でも親権者の同意を得ずに有効な法律行為となります。

そのため「Aは、その認知を取り消すことができない」という文章も未成年者であるAの認知行為が有効であることから導かれます。そのため、答えは「〇」になります、

④エについて

これは、上記の場合とは異なり後見開始の問題になります。「Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く」ということは、Aが成年被後見人であるということです。しかし、Aはまだ未成年であるのに成年被後見人と認定してもいいのでしょうか。

「Aが成年に達するまでは、家庭裁判所は、Aについて後見開始の審判をすることができない」と問題文にはありますが、民法7条の規定から家庭裁判所がその者を後見・監督する者から請求があれば後見開始の審判をすることができます。

後見・監督する者には未成年後見人も含まれているため、Aが未成年で成年被後見人のような状態にある場合には、請求によって後見開始の審判が可能であるため最後の部分が間違っていることになります。

よって、エの解答は「×」になります。

⑤オについて

本問題は、未成年者の行為と贈与が問題となっているため、贈与について簡単に見ておきましょう。

贈与は、書面で契約しなければ有効な贈与にはならず、口頭で「贈与をするよ」といった場合には撤回することが可能です。ただし、無効なとはなりえません。

贈与について簡単にみたところで、本文をみていきましょう。

「Aが相続によって得た財産から100万円をBに贈与する契約を書面によらずに締結した」ことから、書面によらない贈与については撤回することが可能になります。

そのため「書面によらない贈与であることを理由にAがその贈与を撤回した」ことは、有効な行為といえますし、この行為は最初に紹介した未成年者の有効な行為の一つ目に当たります。

ただ、「Aがその贈与の撤回について親権者の同意を得ていなかったときは、Aは、贈与の撤回を取り消すことができ」るのでしょうか。

ここまで来たらみなさんも答えがお分かりのように、贈与を撤回する行為は未成年者でも親権者の同意なしに有効に行える行為ですから、その行為は同意がなかったことを理由に取り消すことはできません。よって、オの答えは「×」になります。

以上によって、第一問の正解は「3のイ・ウ」になります。

 

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