司法試験解説民法H29第3問【失踪宣告】

みなさん、こんにちは!

今日は、失踪宣告に関する司法試験の問題を解説します。 

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〔第3問〕(配点:2) 失踪宣告に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№3])

ア.沈没した船舶の中に在ったAについて失踪宣告がされた場合には,Aはその沈没事故の後1年が経過した時に死亡したものとみなされる。

イ.Aの生死が7年間明らかでなかったことから,Aについて失踪宣告がされた場合には,Aは,7年間の期間が満了した時に死亡したものとみなされる。

ウ.Aの生死が7年間明らかでなかったことから,Aについて失踪宣告がされ,Aが死亡したものとみなされた後にAの生存が判明した場合でも,失踪宣告がされた後にAがした売買契約は,失踪宣告が取り消されなければ有効とはならない。

エ.Aの生死が7年間明らかでなかったことから,Aについて失踪宣告がされ,Aが死亡したものとみなされた後に,Aの子であるBがA所有の甲土地を遺産分割により取得した。その後,Bは,Cに甲土地を売却したが,その売却後にAの生存が判明し,Aの失踪宣告は取り消された。その売買契約の時点で,Aの生存についてBが善意であっても,Cが悪意であるときは,Cは,甲土地の所有権を取得することができない。

オ.Aの生死が7年間明らかでなかったことから,Aについて失踪宣告がされ,Aが死亡したものとみなされた後に,Aの生存が判明したが,失踪宣告が取り消されずにAが死亡した場 合には,もはやその失踪宣告を取り消すことができない。

1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ

問題『http://www.moj.go.jp/content/001224569.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001225946.pdf

①アについて

アの問題は、失踪宣告の中の特別失踪に当たります。特別失踪というのは、戦争や船の沈没などの危難に遭遇して生死が不明となり一年間が経過した場合をいいます。特別失踪の失踪宣告がなされると、危難が去った時に死亡したとみなされます(民法31条)。

そのため、問題文では失踪宣告がされると沈没事故から一年が経過した時に死亡したとみなされるとありますが、上記より危難が去った時に死亡したとみなされることから、アの答えは「×」となります。 

 

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②イについて

イは特別失踪とは違い、普通失踪とよばれます。普通失踪の条件は、生死不明となってから7年間が経過したことであり、失踪宣告がなされると7年間が経過した時に死亡したとみなされることから、イの文章は「〇」であることが分かります。

 ③ウについて

失踪宣告がされてAが死亡したとみなされたことで、契約を締結したもののAが生存していることが判明すると、その売買契約は当然に無効になるように思えます。

しかし、失踪宣告をしてから失踪宣告取消しまでに行われた行為は、当事者双方が善意である限り有効であり、失踪宣告を取り消さなくても有効に法律行為が成立するため、ウの答えは「×」となります。

④エについて

ウでみたように、失踪宣告がされた後にBとCとの間で法律行為である売買契約などが行われた場合は、当事者双方が善意である限り有効ですが、どちらか一方でもAが死亡したことについて悪意であれば、そのBC間の契約は無効となります。

そのため、エの文ではBが善意でCが悪意であることで、売買契約は無効となりCは所有権を取得することができないため、エの答えは「〇」になります。

⑤オについて

オの文は、Aが死亡した思って失踪宣告をして、生存が判明するも失踪宣告が取り消されず死亡し、その後は失踪宣告は取消不可能となっています。

しかし、失踪宣告がなされた後に失踪宣告に定める規定の時期と異なる時期に死亡していたならば、失踪宣告を取り消しさなければならないため(民法32条)、オは「×」となります。

ということで、ア=×、イ=〇、ウ=×、エ=〇、オ=×ということで答えは「3」ということになります。失踪宣告自体は条文の範囲も短いので出題可能性は低そうですが、いつ死亡したのかという細かい部分が出題されたので注意が必要。

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失踪宣告についてはこちらもご覧ください。

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