司法試験過去問解説H29民法第2問【被保佐人】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験民法の過去問解説を行っていきます。

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〔第2問〕(配点:2) 被保佐人Aが保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ずにBに対してA所有の甲土地を売り渡したことを前提として,当該売買契約の効力に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№2]) 

ア.BがAの保佐人に対し当該売買契約を追認するかどうか確答することを1か月の期間を定めて催告した場合において,保佐監督人があるときは,保佐人が保佐監督人の同意を得てその期間内に追認の確答を発しなければ,当該売買契約を取り消したものとみなされる。

イ.BがAに対し当該売買契約について保佐人の追認を得ることを1か月の期間を定めて催告した場合において,Aがその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは,当該売買契約を取り消したものとみなされる。

ウ.Aが行為能力者となった後に,BがAに対し当該売買契約を追認するかどうか確答することを1か月の期間を定めて催告した場合において,Aがその期間内に確答を発しないときは,当該売買契約を追認したものとみなされる。

エ.Aが行為能力者となった後に,AがBから甲土地の所有権移転登記手続の請求を受けたときは,当該売買契約を追認したものとみなされる。

オ.Aが行為能力者となった後に,Aが甲土地の売買代金債権を他人に譲渡したときは,当該売買契約を追認したものとみなされる。

1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ

司法試験 問題』 『司法試験 解答

①アについて

アの問題は、被保佐人であるAの保佐人に対して、追認をするように催告をした場合になります。催告に対して、確答をしない場合には追認した・追認しないという効果が発生しますが、それぞれ条件が違います。

以下の場合、追認するように催告をして、それに対して追認をするという旨の確答がない場合には、契約を追認したものとみなされます。

  • 制限行為能力者が行為能力者となった後に、本人に対して催告を行う場合
  • 制限行為能力者である間に、法定代理人・保佐人・補助人に対して催告を行う場合

以下の場合、追認を得るように催告をして追認をするという確答がなければ、契約を取り消したものとみなされます。

  • 被保佐人、被補助人に対して、保佐人・補助人の追認を得るように催告をした場合

問題文では、保佐人が保佐監督人の同意を得て追認する旨の確答をしなければ、売買契約を「取り消したとみなす」とありますが、上記のように保佐人に催告をして追認する旨の意思表示がなければ「追認」したとみなされます。そのため、アの答えは「×」になります。

 

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②イについて

イの問題は、保佐人の追認を得るように被保佐人に対して催告をした場合になります。

イの問題では、保佐人の追認を得るように被保佐人に対して催告を行っており、追認を得たという通知をしていないときには、売買契約を取り消したものとみなされるため、イの文章は「〇」ということになります。

③ウについて

ウの問題もア・イと同様の問題になります。本人である被保佐人(制限行為能力者)が行為能力者となっており、本人に対して追認するかどうかの催告を行って追認をするという確答がなければ、追認したとみなされるためウの文章は「〇」となります。

④エについて

被保佐人のAが行為能力者となり、その後にBから所有権移転登記手続きの請求を受けたとしても追認することにはなりません。

追認は取消すことができる原因が消滅したときからすることができます。この状況でAは追認可能ですが、民法125条で掲げられることがあった場合には間接的に追認したものとみなされます。

その中に所有権移転登記のような履行の請求も含まれますが、これは取消権者のみの権利となっており、相手方の権利ではありません。したがって、相手方から履行の請求があっても追認したとみなされない点で、エの文章は間違っており「×」となります。

⑤オについて

被保佐人が行為能力者となり、その後Aが甲土地の売買代金債権を他人に譲渡した場合です。この場合でも催告がなく追認できなそうですが、代金債権を他人に譲渡したら①その債権を他人がある程度のお金で購入してくれるということです。

そのため、他人に債権を買ってもらってお金を受け取ることは、Bに対する代金債権を元にBからお金を受け取るのとほぼ同じことになることから、間接的に契約を追認したとみなされます。

これは、125条の「取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡」に該当します。ということで、オの答えは「〇」になります。

ということで、ア=×、イ=〇、ウ=〇、エ=×、オ=〇となり答えは「1 ア・エ」となりました。被保佐人についての問題でしたが、関連して被補助人も押さえておくようにしましょう。

 

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