憲法判例【自衛官護国合祀事件】宗教的行為の活動・静謐の自由
みなさん、こんにちは!
今日は、自衛官護国合祀事件を解説していきます。
参考は最高裁判決・判決要旨になります。
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事件
自衛隊の職員が「合祀実現により自衛隊員の社会的地位の向上と士気の高揚を図る意図、目的」をもって合祀を申請する連合会に協力した。
そのうえ、他の自衛隊職員に対し「殉職自衛隊員の合祀状況を照会し、その回答を連合会会長に閲覧させるなどし」ました。
これにより、遺族の方が精神・信教の自由を害されたとして、合祀の取消・損害賠償を求めた訴訟です。
争点
①憲法20条3項にいう宗教的活動に当たらないか
②遺族の女性が主張する「静謐(せいひつ)の自由」が認められるか
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判決
自衛隊員の行為について
「宗教とのかかわり合いが間接的で職員の宗教的意識もどちらかといえば希薄でありその行為の態様からして、国又はその期間として特定の宗教への関心を呼び起こし、あるいはこれを援助、助長、促進し、又は他の宗教に圧迫、干渉を加える効果をもつものと一般人から評価される行為とは認められ」ない
上記では、目的効果基準を用いて判断しており、その行為がこの基準に当てはまらないとしています。
そのため、自衛隊員の行為は憲法20条3項にいう宗教的活動に当たらないとしました。
静謐の自由について
他者の信仰による行為で自身の宗教の行為を害されることで不快に思うことは当然です。
しかし、それによる法的救済を認めると「かえつて相手方の信教の自由を妨げる結果となるに至ることは、見易いところ」としました。
また、信教の自由の保障は、他者の信仰による行為に対して「それが強制や不利益を伴うことにより、自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請しているものというべき」としました。
信教の自由の保障は原則として、互いに尊重し合うことを必要としているということですね。
そのため「私人がした宗教上の行為によつて信仰生活の静謐が害されたとしても、それが信教の自由の侵害に当たり、その程度、態様が社会的に許容しうる限度を超える場合でない限り、法的利益が侵害されたとはいえない」としました。
本件判例では、自衛隊員の行為が宗教的活動に当たらない。
また、静謐の自由は人格権ではなく法的利益として認められないため、損害賠償も請求できないことを覚えておきましょう。
確認問題 〇か×
①神社において死者の合祀を行うことが遺族である配偶者の心の静謐を害する場合、その遺族は、静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益である宗教的人格権を侵害されたと主張して、損害賠償を請求できる。(司法試験 H28 【第5問】 ア)
解答 ×
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