司法試験民法短答式試験H27第16問【債権保全】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H27民法第16問を解説していきます。

司法試験民法短答式試験H27第15問

〔第16問〕(配点:2) 債権者が債務者に対する債権を保全する必要がある場合に関する次の1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。(解答欄は,[№16]) 1.離婚に伴う財産分与請求権は,協議又は審判によって具体化されるまではその範囲及び内容が不確定・不明確であるため,これを被保全債権として債権者代位権を行使することはできない。 2.債務者が第三者に対してした意思表示が錯誤によるものであったことを認めているときは,債務者自らが錯誤無効を主張する意思がなくても,債権者は,債務者が第三者に対してした意思表示の無効を主張することができる。 3.債権者が,債務者に対する金銭債権に基づき,債務者の第三債務者に対する金銭債権を代位行使する場合,債権者は,自己の債務者に対する債権額の範囲においてのみ,債務者の第三債務者に対する金銭債権を行使することができる。 4.債権者は,債務者が第三者に対して負う債務について,債務者に代わってその消滅時効を援用することができない 出典 問題『司法試験H27民法短答式問題』 解答『司法試験H27民法短答式解答

1について

最高裁55年7月11日判決では「 離婚後協議あるいは審判等によつて具体的内容が形成される前の財産分与請求権を保全するために債権者代位権を行使することは許されない」とされています。

そのため、解答は◯となりますが、理由として「協議あるいは審判等によつて具体的内容が形成されるまでは、その範囲及び内容が不確定・不明確であるから」ということが挙げられています。

2について

民法95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

最高裁45年3月26日判決では「表意者がその意思表示の要素に関し錯誤のあることを認めているときは、表意者みずからは該意思表示の無効を主張する意思がなくても、右第三者は、右意思表示の無効を主張」することが許されています。

表意者自らが無効を主張することになりますが、第三者でも無効を主張できる場合がある判例でした。よって解答は◯となります。

3について

民法423条1項 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。

最高裁昭和44年6月24日判決では「債権者が債務者に対する金銭債権に基づいて債務者の第三債務者に対して有する金銭債権を代位行使する場合においては、債権者は自己の債権額の範囲においてのみ債務者の債権を行使しうると解すべきである」とされています。

代位行使する場合には自己の債権額の範囲のみで認められているため解答は◯となります。

4について

最高裁昭和43年9月26日判決では「債権者は、自己の債権を保全するに必要な限度で、債務者に代位して、他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができる」とされています。

こちらも同様に、自己の債権を保全するのに必要な限度で代位して消滅時効を援用できるため、解答は✖となります。