司法試験民法短答式試験H27第15問【債務不履行による損害賠償】
みなさん、こんにちは!
今日は、司法試験H27民法第15問を解説していきます。
〔第15問〕(配点:2) 債務不履行による損害賠償に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№15]) ア.消費貸借の約定利率が法定利率を超える場合,借主が返済を遅滞したときにおける損害賠償の額は,約定利率により計算される額であり,貸主は,約定利率により計算される額を超える損害が生じていることを立証しても,その賠償を借主に請求することはできない。 イ.家屋の賃借人が賃貸借契約の終了後もその家屋を賃貸人に返還しない場合,賃貸人は,その賃貸借契約で定められた賃料に相当する額の損害賠償を賃借人に請求することができるが,賃貸人がその賃貸借契約の終了後に別の者との間でその家屋の賃貸借契約を締結し,その賃貸借契約で定められた賃料が従前の賃料を上回るときであっても,その新たな賃料に基づく損害賠償を賃借人に請求することはできない。 ウ.営業用店舗の賃貸人が修繕義務の履行を怠ったために賃借人がその店舗で営業をすることができなかった場合,賃借人は,これにより生じた営業利益の喪失による損害の賠償を,債務不履行により通常生ずべき損害として請求することができるが,賃借人が営業をその店舗とは別の場所で再開するなどの損害を回避又は減少させる措置を何ら執らなかったときは,そのような措置を執ることができた時期以降に生じた損害の全ての賠償を請求することはできない。 エ.当事者が債務不履行について損害賠償の額を予定している場合,裁判所は,その損害賠償の予定額を増減することはできず,過失相殺により賠償額を減額することもできない。 オ.当事者が損害賠償の方法について金銭以外の物による旨の合意をしても,その効力は認められない。 1.ア ウ 2.ア オ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ エ 出典 問題『司法試験H27民法短答式問題』 解答『司法試験H27民法短答式解答』
アについて
最高裁昭和48年10月11日判決では「民法四一九条によれば、金銭を目的とする債務の履行遅滞による損害賠償の額は、法律に別段の定めがある場合を除き、約定または法定の利率により、債権者はその損害の証明をする必要がないとされているが、その反面として、たとえそれ以上の損害が生じたことを立証しても、その賠償を請求することはできないものというべく」とされています。
損害賠償額の計算は民法419条1項より明らかなので、解答は◯となります。
イについて
最高裁昭和37年11月16日判決では特別の事情に該当する場合の損害賠償額について述べられています。
イの問題では新賃料が従前の賃料よりも上昇しており、それによる損害を当事者が予見したり予見できていれば、債権者は新賃料による損害賠償を請求することができます。
そのため、解答は✖となります。
ウについて
最高裁平成21年1月19日判決では、ウのような事情の下で賃借人が損失を回避するような「措置を執ることができたと解される時期以降における損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない」としています。
そのため解答は◯となります。
エについて
最高裁平成6年4月21日判決では「 当事者が損害賠償の額を予定した場合においても、債務不履行に関し債権者に過失があったときは、特段の事情のない限り、裁判所は、損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき、これをしんしゃくすべきである」とされています。
過失による賠償額の減額も認められているため解答は✖となります。
オについて
金銭以外のものでも損害賠償は有効となるため解答は✖となります。以上、ア=ウ=◯・イ=エ=オ=✖なので解答は1となります。