司法試験民法短答式試験H27第14問【譲渡担保権】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験H27民法第14問を解説していきます。

司法試験民法短答式試験H27第13問

〔第14問〕(配点:3) 譲渡担保に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№14]) ア.不動産が譲渡担保の目的とされ,譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において,譲渡担保権の設定者は,その譲渡担保権に係る債務の弁済と,その不動産の譲渡担保権者から譲渡担保権の設定者への所有権移転登記手続との同時履行を主張することができない。 イ.対抗要件を備えた集合動産譲渡担保権の設定者が,その目的とされた動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をし,その動産を占有改定の方法により買主に引き渡した場合,買主はその動産の所有権を取得することができる。 ウ.不動産の譲渡担保において,債務者が弁済期にその譲渡担保権に係る債務を弁済しない場合,譲渡担保権者がその不動産を譲渡したときは,譲受人は確定的にその不動産の所有権を取得し,債務者は債務を弁済してその不動産を受け戻すことができない。 エ.不動産が譲渡担保の目的とされ,譲渡担保権の設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記がされた場合において,その譲渡担保権に係る債務の弁済により譲渡担保権が消滅した後にその不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは,譲渡担保権の設定者は,登記がなければ,その所有権をその不動産を譲り受けた第三者に対抗することができない。 オ.集合動産の譲渡担保権者は,その譲渡担保権の設定者が通常の営業を継続している場合であっても,その目的とされた動産が滅失したときは,その損害をてん補するために設定者に支払われる損害保険金の請求権に対して物上代位権を行使することができる。 1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ 出典 問題『司法試験H27民法短答式問題』 解答『司法試験H27民法短答式解答

アについて

最高裁昭和57年1月19日判決では「抵当債務は、抵当権設定登記の抹消登記手続より先に履行すべきもので、後者とは同時履行の関係に立たない」と述べられます。

本件でも債務の弁済が先履行に立つと考えられるため、解答は◯となります。

イについて

最高裁平成18年7月20日では、譲渡担保権の設定者が目的物の動産について通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない」としています。

その範囲内で処分されたのであれば所有権を取得することができるため、解答は✖となります。

ウについて

最高裁平成6年2月22日判決では、 「譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合には、譲渡担保を設定した債務者は、譲受人がいわゆる背信的悪意者に当たるときであると否とにかかわらず、債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができない」としています。

背信的悪意者に当たるかどうかは関係なく目的不動産を受け戻せないため、解答は◯となります。

エについて

最高裁昭和62年11月12日判決では「 不動産が譲渡担保の目的とされ、設定者甲から譲渡担保権者乙への所有権移転登記が経由された場合において、被担保債務の弁済等により譲渡担保権が消滅した後に乙から目的不動産を譲り受けた丙は、民法一七七条にいう第三者に当たる」とされています。

譲渡担保権消滅後にその目的物を譲り受けた者は民法177条の第三者に該当し、登記を備えた者が勝ちます。

そのため、譲渡担保権者は登記がなければ対抗できないので解答は◯となります。

オについて

最高裁平成22年12月2日判決では「譲渡担保権設定者が通常の営業を継続している場合には,目的動産の滅失により上記請求権が発生したとしても,これに対して直ちに物上代位権を行使することができる旨が合意されているなどの特段の事情がない限り,譲渡担保権者が当該請求権に対して物上代位権を行使することは許されない」とされています。

集合物譲渡担保物件の効力は動産滅失による損害補填のために設定者に支払われる損害保険金に係る請求権にも及びますが、通常の営業を継続していればその請求権に物上代位権を行使できないという判例でした。

そのため、解答は✖となります。以上、ア=ウ=エ=◯・イ=オ=✖なので解答は4となります。

 

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