〔憲法基礎知識〕―憲法13条で定められている幸福追求権・新しい人権とは?

日本国憲法13条では「新しい人権」というのが派生していますが、「新しい人権」とは非常に抽象的な規定であり、それをどのようにとらえるかは重要になります。

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憲法13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

13条で幸福追求権が規定されていますが、この13条はもともとアメリカ人権宣言の「生命、自由、幸福の追求(life, liberty, pursuit of happiness)」を根源としており、ロックの自然権思想がもとになっています。

中でも幸福追求権こそが、私たち個人を尊重したりする価値を具体的なものにしたと言えるでしょう。

ただ、13条は幸福を「保障する」ものではありません。何が幸福かは人それぞれで違いますから、その権利自体を保障するのではなく、幸福を「追求する」権利を保障しています。

新しい人権とは何か?

13条が「包括的人権規定」と呼ばれているように、「新しい人権」の根拠とする条文となっています。

日本国憲法では14条以下に様々な人権規定が挙げられていますが、それはあくまで憲法が制定された当時における人権を挙げたものであり、新たに設けてはならないというわけではないのです。

そうすると、憲法13条は当時になかった人権を創設することを予定しているということもできるでしょう。

①プライバシー権

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上記でも紹介していますが、幸福追求権の中で最高裁で認められたものとして「プライバシー権」が挙げられます。これはかなり重要で、判例も数多くあるのでチェックしておきたいですね。

 

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1.宴のあと事件

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宴のあと事件ではプライバシー権の法的救済が認められるための要件が示されており、この基準は非常に重要になります。

2.前科照会事件

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本件では前科や犯罪歴というのはその人の名誉や信用に関係するものであり、前科がある者であっても公表されない法律上の利益を有しているとされました。

3.堺通り魔実名報道事件

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「実名」で報道することがプライバシーなどの侵害に当たらないかの判例ですが、社会的に重要な関心事であったりする場合には許容されるとされた判例になります。

 

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4.ノンフィクション『逆転』事件

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書籍で前科等が公表された判例になりますが、こちらは表現の自由<プライバシー権という構図になります。

5.『石に泳ぐ魚』事件

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本件は4と同様に、表現の自由<プライバシー権という構図になり、差し止めで表現の自由が制限されることになりました。

6.長良川事件報道訴訟

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この判例では推知報道はプライバシー権を侵害するかが問題となりましたが、本人を特定するに足りる事情はなく、プライバシー権を侵害しないとされました。

 

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紹介したように、プライバシー権に関する判例は非常にたくさんあるわけですが、ちょうど、2018年の司法書士試験でも出題されており、今後も重要な論点になることは間違いないでしょう。

②肖像権

プライバシー権に加えて「肖像権」というのも新しい人権ですが、プライバシー権のように正面から「肖像権を認める」とされたことはないので、新しい人権を選ぶ問題には注意が必要です。

京都府学連事件

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肖像権の内容については「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」とされています。

また、最高裁では「これを肖像権と呼ぶかは別として」と述べていますが、そうした権利が存在することが明らかになった判例と言えるでしょう。

環境権

大阪空港騒音公害訴訟

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この判例では人格権と環境権に基づいた差し止めが認められなかったため、最高裁では実際に正面から「環境権」が認められていません。

④自己決定権

自分のことは自分で決められる権利が「自己決定権」になります。好きな服を着たり、好きなことをしたりといった感じです。

アメリカでは性転換が認められないようになる可能性がありますが、そうしたことが日本で起こった場合に「自己決定権」が非常に重要な論点になるのではないかと思います。

まとめ

以上、憲法13条の幸福追求権とそこから導き出される新しい人権を紹介していきました。時代の移り変わりにともなって、どんな権利が認められるようになるのか注目ですね。

 

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