司法試験過去問解説平成29年民法短答式試験第14問 

みなさん、こんにちは!

今日は、【質権又は譲渡担保権】の問題を解説します。

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〔第14問〕(配点:2)
質権又は譲渡担保権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№14])
ア.同一の動産について複数の質権を設定することはできないが,同一の動産について複数の譲渡担保権を設定することはできる。
イ.動産を目的とする質権は占有改定の方法によるその動産の引渡しによっては効力を生じないが,動産を目的とする譲渡担保権はその設定契約によって設定され,占有改定の方法によるその動産の引渡しがあれば,譲渡担保権者は第三者に譲渡担保権を対抗することができる。
ウ.債権質の目的である債権の弁済期が到来した場合には,被担保債権の弁済期が到来していないときであっても,質権者は,債権質の目的である債権を直接に取り立てることができる。
エ.債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは,質権の設定は,その証書を交付することによって,その効力を生ずる。
オ.動産を目的とする譲渡担保権が設定されている場合,その設定者は,正当な権原なくその動産を占有する者に対し,その動産の返還を請求することができない。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ

問題『http://www.moj.go.jp/content/001224569.pdf

解答『http://www.moj.go.jp/content/001225946.pdf

アについて

同一の不動産に数個の質権が設定された場合には質権の順位は設定の前後による(民法355条)とされているため、質権を複数設定することは可能です。

よって、解答は✖となります。

イについて

質権の設定は債権者に目的物を引き渡すことで効力を生じるとされます(民法344条)が、占有改定は本条の引き渡しには含まれないとされています。

譲渡担保について最高裁判決昭和30年6月2日では「債権者は・・・占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができる」としています。

そのため、解答は〇となります。

ウについて

 

エについて

民法363条では以下のように規定されています。

債権であってこれを譲り渡すにはその証書を交付することを要するものを質権の目的とするときは、質権の設定は、その証書を交付することによって、その効力を生ずる。

出典『民法第363条 - Wikibooks

ここにあるように、債権であり譲り渡す際に証書の交付な必要なものを質権の目的とする際には、質権は証書を交付することで設定されます。

必ずしも一般の指名債権に証書が存在しているわけではないので、「証書を交付することを要するもの」と限定しています。

以上より、解答は〇となります。

オについて

最高裁昭和57年9月28日判決では「譲渡担保の設定者は、正当な権原なく目的物件を占有する者に対し、その返還を請求することができる」としています。

よって、解答は✖となります。

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