司法試験H29民法過去問解説第6問【時効制度】

みなさん、こんにちは!

今日は、司法試験民法過去問を解説していきます。

www.eityan-houritu.site

スポンサードリンク

 

〔第6問〕(配点:2)
時効に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№6])

ア.買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権の消滅時効は,買主が目的物の引渡しを受けた時から進行を始める。

イ.遺留分権利者が減殺請求によって取得した不動産の所有権に基づく登記請求権は,時効によって消滅することはない。

ウ.相続財産に関しては,相続財産管理人が選任された場合でも,相続人が確定するまでの間は,時効は完成しない。

エ.主たる債務者がその債務について時効の利益を放棄した場合には,その保証人に対してもその効力を生ずる。

オ.債務者が,消滅時効完成後に債権者に対して債務を分割して支払うの旨の申出をした場合には,時効完成の事実を知らなかったときでも,その後その時効を援用することは許されない。

1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エオ

http://www.moj.go.jp/content/001224569.pdf

http://www.moj.go.jp/content/001225946.pdf

アについて

アでは、売買契約の際の瑕疵担保による損害賠償請求権の消滅時効の起算点が問題となっています。

判例では、瑕疵担保による買主の売主に対する損害賠償請求権の消滅時効は、目的物の引き渡しを受けた時が起算点であり、その時から進行を始めるとされています。よって、アの文章は「〇」となります。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/228/052228_hanrei.pdf 判例」

イについて

遺留分滅殺によって得た権利が、消滅時効によって消滅するかが争点となります。遺留分とは、相続人に必ず残しておかなければならない財産のことを言い、これが消滅時効で消滅すると、相続人が確実に得られた権利をなくすことになります。

そのため、判例では「遺留分権利者が遺留分減殺により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく 登記手続請求権は、時効によって消滅することはない」としています。

よって、イの答えは「〇」になります。

 

スポンサードリンク

 

ウについて

相続財産は、時効によって消滅すると、相続人が損害を被るため、相続人を保護する規定が設けられています。

民法160では、

  • 相続人が確定
  • 相続管理人が選任されたとき
  • 破産手続開始の決定

これらがあったときから「6ヶ月」が経過するまでは、時効が完成しないとされています。そのため、相続人か相続管理人のどちらかが選任され、6か月が経過したのちに時効が完成するためウの問題は「×」となります。

ただ、時効の完成が猶予されるだけで、時効は中断しません。紛らわしいので、注意するようにしましょう。

エについて

債務者の時効の利益の放棄の効果が、保証人にまで及ぶかが争点となります。債務者が時効の中断・承認などを行った場合には、保証人にも時効の中断の効果が生じますが、時効の放棄の効果は生じるのでしょうか。

この点、大審院時代13・12・25において、債務者の時効の利益の放棄の効果は保証人に及ばない(時効の放棄の相対効)としてます。よって、エは「×」となります。

ただし、時効の利益の放棄の効果は及ばないから保証人が時効の利益を放棄できないわけではなく、保証人が時効の利益を放棄することは可能です。

オについて

時効の利益を放棄することを間接的に示した場合、その後に時効の利益を援用することが許されるかが争点。

判例では、消滅時効が完成したのちに債務を承認した、つまり上記であれば債務を分割して支払うことを申し出ていることがそれに当たります。

この場合、債務者が時効の完成を知らなくても、債務を履行してくれることを信用した債権者を保護するために、債務を承認したのちに消滅時効を援用することは禁止されているため、オの答えは「〇」となります。

ただ、時効完成後に債務の承認を行い、その後に時効がもう一度完成すれば時効を援用することが許されているため、注意しておきましょう。

以上より、ア=イ=オ=〇、ウ=エ=×となるため正解は「4」となります。時効は、消滅時効の起算点が問題にされることもあります。

今回は、時効の利益の放棄・時効の完成・時効の援用・消滅時効の起算点を復習しておきましょう。

www.eityan-houritu.site


 

スポンサードリンク