憲法判例【受刑者の信書発信の自由・刑事施設被収容者の人権】最高裁平成18年3月23日判決

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今日は、最高裁平成18年3月23日判決を解説していきます。

最高裁全文はこちらになります。

争点

①監獄法で信書の発受を制限することが憲法21条、14条1項に違反しないか。 ②信書の発信を不許可としたことが国家賠償法上違法の評価を受けるか。

判決①

憲法21条の趣旨・目的から

「受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は,受刑者の性向,行状,監獄内の管理,保安の状況,当該信書の内容その他の具体的事情の下で,これを許すことにより,監獄内の規律及び秩序の維持,受刑者の身柄の確保,受刑者の改善,更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があると認められる場合に限って,これを制限することが許されるものというべきであり,その場合においても,その制限の程度は,上記の障害の発生防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきものと解するのが相当である

⇒制限をするとしても、それは合理的でないといけない。

「そうすると,監獄法46条2項は,その文言上は,特に必要があると認められる場合に限って上記信書の発受を許すものとしているようにみられるけれども,上記信書の発受の必要性は広く認められ,上記要件及び範囲でのみその制限が許されることを定めたものと解するのが相当であり,したがって,同項が憲法21条,14条1項に違反するものでないこと」は、最高裁昭和45年9月16日判決より明らかとしています。

判決②

監獄法46条2項の解釈について

「受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は,その必要性が広く認められ,判決①の要件及び範囲でのみその制限が許されると解される」

刑務所長の判断について

「受刑者のその親族でない者との間の信書の発受は特に必要があると認められる場合に限って許されるべきものであると解した上で,本件信書の発信については,権利救済又は不服申立て等のためのものであるとは認められず,その必要性も認められないと判断して,これを不許可とした」

「同刑務所長が,上告人の性向,行状,熊本刑務所内の管理,保安の状況,本件信書の内容その他の具体的事情の下で,上告人の本件信書の発信を許すことにより,同刑務所内の規律及び秩序の維持,上告人を含めた受刑者の身柄の確保,上告人を含めた受刑者の改善,更生の点において放置す ることのできない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるかどうかについて考慮しないで,本件信書の発信を不許可としたことは明らかというべきである」

「しかも,前記事実関係によれば,本件信書は,国会議員に対して送付済みの本件請願書等の取材,調査及び報道を求める旨の内容を記載したC新聞社あてのものであったというのであるから,本件信書の発信を許すことによって熊本刑務所内に上記の障害が生ずる相当のがい然性があるということができないことも明らか

⇒本件において、信書の発信を許すことで刑務所内の秩序を乱すなどの障害が生じる可能性は低い。

まとめ

「そうすると,熊本刑務所長の本件信書の発信の不許可は,裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用したものとして監獄法46条2項の規定の適用上違法であるのみならず,国家賠償法1条1項の規定の適用上も違法というべき」

信書の発信などには制限がありますが、本件ではその制限をする際に他の事情などを考慮しておらず、信書の発信を許すことで弊害が生じる可能性も低いということで、刑務所長の処分は国家賠償法上も違法であるとされました。