民法時効制度~取得時効とは何か
みなさん、こんにちは!
今日は、取得時効を解説します。
所有権の取得時効
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。 『民法162条』
解説
所有の意思を持ち、平穏かつ公然と他人の物を所有したなら20年で時効取得可能、善意無過失なら10年で時効取得が可能です。
所有権の取得時効では、162条に次の要件が掲げられています
時効の対象
上記の要件を満たして取得時効を獲得できるとすれば、公共用の道路などを「私が占有する!」という意思をもって占有していれば、時効取得できると考えられますが実際はどうなのか。
判例では、公共財産としての機能がある限り時効取得はできないが、公共財産としての機能をなくして維持する理由がなくなれば、黙示的に公用が廃止されたとして時効取得が認められるとしました(最高裁判決昭和51年12月24日)。
所有権以外の取得時効
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。『民法163条』
解説
所有権以外の財産権も、自己のためにする意思・平穏かつ公然と権利を行使すると、善意無過失で10年、そうでなければ20年で時効取得が可能です。
自己のためにする意思
所有の意思と少し違い、自分がその権利を行使するという意思をいいます。
所有権以外の財産権
・用益物権
地上権・永小作権・地役権など、継続的に行使され外形上認識できるもの(民法283条)
・債権
原則不可能であるが、土地賃借権については例外的に債権の取得時効が認容されるとしています。
土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地賃借権を時効により取得できるとされます(最高裁判決昭和43年10月8日)。
対象とならない債権
抵当権・留置権・先取特権は、時効によって取得することができません。
占有の中止等による取得時効の中断
第162条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われたときは、中断する。『民法164条』
解説
占有の中止により取得時効も中断(自然中断)します。そこで、他人に奪われた場合に取得時効が中断してしまうため、占有を奪われてから占有回収の訴えを一年以内に提起することで、占有は継続します(民法201条3項)。
占有の中止等による取得時効の中断
前条の規定は、第163条の場合について準用する。『民法165条』
解説
占有の中止などによる取得時効の中断についは、所有権以外の財産権で取得時効を行う場合にも適用されることとしています。
消滅時効も参考にしてみてください。