民法総則~消滅時効とは何か

みなさん、こんにちは!

今日は、消滅時効を解説します。

消滅時効の進行等

消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。 前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。 ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。 『民法166条

解説

消滅時効は、権利を行使できることができる時から進行します。これは、消滅時効の起算点を定めたものと解することができ、消滅時効の起算点は債権の性質によって異なります。

消滅時効の起算点

  • 確定期限の定めがある債権

期限到来時

例)本を返す期限

  • 不確定期限のある定めの債権

期限到来時

例)就職したら時計を返す

 期限の定めがない債権

債権が成立した時

  • 停止条件付債権

条件成就の時

例)合格したらゲームを買う

  •  債務履行不能(債務不履行)による損害賠償請求権

本来の債権について履行請求できる時

例)ゲームを6月1日に返すはずが、ゲームを壊したりしてしまい返却できなくなった

  •  契約解除による原状回復請求権

契約を解除した時

  • 返還時期の定めのない消費貸借

債権が成立した後に、相当期間が経過した後

→消費貸借のためこのような性質になっています

  • 不法行為に基づく損害賠償請求権

不法行為を知った、またはその加害者を被害者が知った時

その他の債権

  • 取消権

追認可能なときから5年、行為から20年経過したとき(民法126条

  • 詐害行為取消権

取消の原因を知った時から2年、行為から20年経過したとき(民法426条

  • 相続回復請求権

相続権が侵害された事実を知ってから5年、相続開始から20年経過したとき(民法884条

  • 相続承認放棄の取消権

追認できるときから6か月、承認または放棄の時から10年(民法919条

  • 遺留分滅殺請求権

相続開始、贈与、遺贈を知ってから1年、相続開始から10年経過したとき(民法1042条

上記5つの権利も、上記の期間が経過した時には消滅時効によって権利が消滅します。

債権等の消滅時効

債権は、十年間行使しないときは、消滅する。債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。『民法167条

解説

債権…10年行使しないと消滅

債権・所有権以外の財産権…20年行使しないと消滅

消滅時効の効果を受ける権利

債権・用益物権(永小作権・地役権・地上権)

消滅時効の効果を受けない権利

①所有権、物上保証権

②担保物権

③占有権、留置権

④相隣権、共有物分割請求権

※相隣権とは、隣り合っている土地の権利のこと

 定期金債権の消滅時効

定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。民法168条

解説

定期金の債権は、

    • 第一回弁済期から20年行使しない時
    • 最後の弁済期から10年行使しない時に消滅

定期金債権とは、年金や家賃など定期的にお金を給付する債権のことをいい、定期的な状態が長期に渡って持続していることを考慮して規定されています。

定期金給付債権の消滅時効

年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。『民法169条

解説

一年以内の定期的な期間で定められた債権は、5年間で消滅します。例えば、今年の家賃が5年で消滅するなどです。

家賃などのほか、マンションの管理費が月ごとに支払われる場合には、169条の定期金債権に当たるとしました(最高裁判決平成16年4月23日)。

三年の短期消滅時効

次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。 一  医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権 二  工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権 『民法170条

解説

上記の債権は3年で消滅することになりますが、但し書きとして2項の債権は「工事が終了したときから」消滅時効の起算を開始するため、終了するまで消滅時効が進行しないことに注意が必要です。

三年の短期消滅時効

弁護人又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から三年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。『民法171条

解説

上記の職務に従事する人々は、その職務を執行したときから3年を経過したときに、受けとった書類などの責任を逃れるとされます。

これは、通常であれば事件が終了した時に書類を返却するのが望ましいことであり、依頼者側にとっても当然期待される行為です。また、上記の人々の外の業務を円滑に進めるために時効期間を短期にしたと解されます。

二年の短期消滅時効

弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から二年間行使しないときは、消滅する。前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から五年を経過したときは、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。『民法172条

解説

上記の職種の人々がもつ「報酬債権」などは事件が終了したときから2年以内に消滅時効で消滅します。

報酬などは事件が終了してからすぐ支払われるのが普通であり、また、上記の人々はこの制度も熟知しておられるはずなので、短期消滅時効が定められたと考えられます。

 二年の短期消滅時効

次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。 一  生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権 二  自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権 三  学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権 『民法173条

解説

上記の掲げられた債権は、取引などが行われてからなるべく短期のうちに処理されることが普通であると考えられ、2年の短期消滅時効が定められています。

一年の短期消滅時効

次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。 一  月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権 二  自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権 三  運送賃に係る債権 四  旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権 五  動産の損料に係る債権 『民法174条

解説

上記の債権も同様、なるべく短期の処理が望ましいため一年の消滅時効が定められました。第五項について例を挙げておくと、DVDやレンタカーなど動産などを貸す時の使用料金に基づく代金債権のことです。

判決で確定した権利の消滅時効

確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。 『民法174条の2

解説

確定判決で確定した権利については、10年より短い消滅時効(短期消滅時効)が定められていたとしても、時効期間が10年と定められました。

ただし、権利が確定したとしても、弁済期が到来していないのであれば消滅時効が10年に延長となることはありません。

取得時効はこちらになります。

民法時効制度~取得時効とは何か